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外来での利尿薬処方状況は急性心不全発症時の利尿薬療法を選択する上で有益な情報 利尿薬は心不全患者の外来診療では中心的や薬剤の1つで、心不全増悪による入院を予防するために増量されることも多い。 しかし、心不全患者に利尿薬を高用量で投与すると、腎機能低下をはじめとする生理機能や臨床転帰の悪化が懸念される。 4月2日から米国ニューオーリンズで開催された第60回米国心臓学会(ACC2011)で、米国Massachusetts General HospitalのR.V.Shah氏らが、急性心不全発症時の利尿薬の投与量および投与経路と臨床転帰との関連性を検討したDOSE-AHF試験のサブ解析を行い、外来で投与されていた利尿薬量が予後に及ぼす影響について検討した結果を報告した。 DOSE-AHF試験は、急性心不全患者308例を、入院後にフロセミドを持続投与する群あるいは12時間ごとにボーラス投与する群、外来で使用していた経口利尿薬と同等量で投与する群(低用量)あるいは2.5倍量で投与する群(高用量)の4群にランダムに割り付ける2×2デザインで実施されており、フロセミドの投与量および投与経路が有効性および安全性に及ぼす影響を検討している。 同試験の最新報告では、フロセミドの持続投与したグループと12時間ごとのボーラス投与したグループとの間に、有効性および安全性に差はないことが示されている。 また、外来で処方されていた利尿薬の量はフロセミドで換算して平均120mg(80-160mg)だった。 DOSE-AHF試験のサブ解析である本試験では、外来(入院時までの治療)での利尿薬投与量をフロセミド投与量に換算し、フロセミド投与量の中央値(120mg/日)で患者を2分した。 投与量が120mg/日以上であった患者を外来利尿薬高用量グループ、120mg/日未満であった患者を外来利尿薬低用量グループとし、入院時の利尿薬投与量が臨床転帰に及ぼす影響を検討した。 結果として、入院時のフロセミド投与量、入院後のフロセミド投与経路および投与量は、入院後72時間目の血清クレアチニン値、VASによる症状スコア、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値、システインC値に影響を及ぼさなかった。 入院時のクレアチニン値およびフロセミド強化療法は、入院後72時間目の体液減少量(net値)の独立した予測因子であった。 また、高用量グループでは、入院後の利尿薬ボーラス投与群の72時間目の体液減少量(net値)が持続注入群に比べて多く(交互作用、p=0.02)、有効性や腎の安全性には差はないものの、うっ血を抑制する観点からはボーラス投与の方が好ましいと考えられた。 さらに、高用量グループは低用量グループに比べて、死亡/再入院までの期間が短く(HR=1.77、95%信頼区間;1.16-2.71、p=0.009)、また退院までの期間が長かった(HR=0.77、95%信頼区間;0.61-0.97、p=0.03)。 以上の検討からShah氏は、「急性心不全発症患者の入院時に適切な利尿薬療法を選択する上で、バイオマーカーや利尿薬処方状況など入院時の患者プロフィールは重要な情報である」と結論した。 出典 NM online 2011.5.6 版権 日経BP社 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容) ▲
by wellfrog4
| 2011-05-31 00:14
| 循環器
腎機能評価にシスタチンC Crに基づくeGFRよりも早期に腎障害を検出 腎機能の新しい指標として、シスタチンCが注目されている。 筋量に影響されるクレアチニン(Cr)に比べ、糸球体濾過量(GFR)を正確に反映する。現在、シスタチンCを基にしたGFR推算式の作成も進行中だ。 「糖尿病や高血圧などの患者は、腎機能低下のリスクがある。こうした患者の中には、紹介受診時に既に推算糸球体濾過量(eGFR)が50mL/分/1.73m2を切り、腎障害が進行してしまっているケースも少なくない」。 愛媛大病態情報内科学准教授の大蔵隆文氏はこう打ち明ける。 腎障害の拾い上げには、Crの値を基に算出するeGFRが使われている。 しかしCrは腎機能が約50%を切るまでは上昇せず、軽度の腎障害の検出は難しい。 そこで大蔵氏が腎機能のモニタリングに用いているのが、シスタチンCだ。 シスタチンCは全身の細胞から一定の割合で産生される蛋白質で、細胞障害を引き起こす蛋白分解酵素の働きを阻害し、活性を調節する役割を持つ。 分子量が小さく全て腎糸球体で濾過されるため、血中濃度はGFRに依存し、腎機能の低下に伴って血清シスタチンCの濃度は上昇する。 基準範囲はおよそ0.5~1.0mg/Lで、その産生は生涯を通してあまり変動せず、年齢や性別の影響を受けにくい。 1985年にSimonsenらが初めて血中シスタチンCとGFRの関連を報告して以来、腎障害患者における血中シスタチンC測定の有用性が検討されてきた。 シスタチンCはCrに比べて腎機能低下の影響を早期から受けるという特徴を持つ(図1)。 ![]() 図1 血清シスタチンCと血清クレアチニン(Cr)の反応性(編集部で一部改変) ブラインド領域とは、シスタチンCやCrがGFRの低下を反映しない範囲のこと。シスタチンCはGFRの低下をより早期から反映する。腎疾患患者212例で調査した。 このため、抗菌薬や抗癌剤の使用で起こり得る薬剤性の急性腎障害も早期に発見できる。 海外では最近、シスタチンCがeGFR正常者の長期死亡の予測因子になるとの報告も出てきている(J Am Coll Cardiol.2010;56:1930-6.)。 2006年から国内でも、3カ月に1回の検査が保険適用となり、腎臓内科を中心に利用が広がっている(点数は130点)。 大蔵氏は「腎機能低下のリスクのある慢性疾患患者では、シスタチンCを定期的に測定することで、腎障害をより早く拾い上げられるようになる」と期待する。 eGFRは実測GFRと乖離も 現在、腎障害の早期発見やスクリーニングにはeGFRが使われている。 クレアチニンクリアランス(Ccr)も腎機能の指標となるが、24時間蓄尿が必要となり、煩雑なためあまり行われていない。 「eGFRは数値を見るだけで腎機能異常があるかどうかが分かるので、スクリーニングには非常に有用だ」と聖路加国際病院腎臓内科部長の小松康宏氏は話す。 しかし、Crはクレアチンが代謝されて生成するため、筋量が少ない患者では元々Crが少なく、腎機能が低下してもeGFRが見かけ上高くなる可能性がある。 一方、筋量が多い患者では、腎機能が正常でもeGFRが低く出ることもある。 推算式では患者の年齢、性別によって補正を行うが、腎機能を正しく反映できない症例が含まれてしまう。 小松氏の調査では、聖路加国際病院の慢性腎臓病専門外来を受診した141人のうち、29.8%(42人)がeGFRが50mL/分/1.73m2以下だったにもかかわらず、GFRを示す実測Ccrが50mL/分以上あった(図2)。 「eGFRが低いために紹介された患者の中には、シスタチンCが基準範囲内で、特に治療を必要としない症例もあった」と小松氏は話す。 ![]() 図2 eGFRと実測クレアチニンクリアランス(Ccr)の比較(提供:小松氏) 全体の29.8%(42人)は、日本腎臓学会の推算式で求めたeGFRが50mL/分/1.73m2以下だったにもかかわらず、実測Ccrは50mL/分以上あった。 こうした背景から現在、厚生労働省の腎疾患対策研究事業として、シスタチンCを基にしたeGFR推算式の作成が進められている。 作成に関わる阪大機能診断科学講座准教授の堀尾勝氏は、慢性腎臓病(CKD)患者を対象に、シスタチンCに基づくeGFRと実測GFRを比較し、その精度を調査した。 「シスタチンCに基づくeGFRは、Crに基づくeGFRよりは実測GFRとの乖離が少なかった。しかしシスタチンCの血中濃度は頭打ちになることが分かっており、進行した腎不全などでは腎機能を正確に反映できない可能性がある」と指摘する。 併用によって精度を高める シスタチンCに基づくeGFR推算式を臨床で使う上では、測定法の標準化も課題になる。 現在、10社以上から発売されている測定キットは、それぞれ異なる社内標準品を基準にしている。 基準範囲はおよそ0.4~1.1mg/Lの間に収まるが、メーカー間で差が生じている。 このため、医療機関が採用するキットにより、同じサンプルでも結果が異なる。 しかし昨年、シスタチンCの測定に使用する標準物質が欧州で登場。 今年に入り、メーカー各社がこの標準物質を基準に測定結果をそろえる動きが出てきた。 測定法の標準化が進み、共通の標準物質に基づきシスタチンCが測定できるようになれば、シスタチンCを基にしたeGFRの推算式が臨床応用できるようになる。 「動態が十分明らかになっていないこともあり、今のところシスタチンCはCrに完全に置き換わるものではない。しかしそれぞれの推算式で出したeGFRの平均値を求めたり、CrとシスタチンCの両方を使う新しい推算式を作成すれば、今以上に正確に腎機能を把握できるようになるだろう」と堀尾氏は話している。 出典 NM online 2011.5.27 版権 日経BP社 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容) ▲
by wellfrog4
| 2011-05-30 00:44
| 腎臓病
第54回 日本糖尿病学会年次学術集会 (2011年5月19日~21日)の記事で勉強しました。 5月21日のシンポジウム「インクレチン関連薬の臨床」で関西電力病院 清野裕先生らのグループが、インクレチン関連薬の実臨床から得られた知見を紹介された講演の記事です。 DPP-4阻害薬、魚介類の摂取で効果高まる 2型糖尿病の治療戦略として、インクレチン関連薬を用いた薬物療法に期待が寄せられている。 特に日本人では他民族に比べインスリン分泌不全が糖尿病の特徴であり、有用性が高いことが示唆されている。5月21日のシンポジウム「インクレチン関連薬の臨床」で関西電力病院 清野裕氏らのグループは、インクレチン関連薬の実臨床から得られた知見を紹介した。 DPP-4阻害薬はGLP-1の分解を抑制することで作用する。 「日本人では概して食事に対するGLP-1の分泌能が弱いことが明らかになってきた」と矢部氏。 これは糖尿病、非糖尿病にかかわらず見られると言う。同院 臨床検査部 村上長司氏らとの研究によると、GLP-1の分泌は空腹時の遊離脂肪酸およびHbA1c値と正相関を示すことが明らかになった。 臨床作用を見ても、HbA1cが高く、コントロールが悪い症例でDPP-4阻害薬の効果は高い。 しかし、DPP-4阻害薬(シタグリプチン)導入前のHbA1cで層別化し、12カ月後のHbA1c達成率を見ると、7%以上だったコントロール不良例の6.5%未満達成率はおよそ半数程度だった。 矢部氏はこの結果から「DPP-4阻害薬の適応をコントロール不良例とするのは慎重に考えるべき」と解説した。 さらにDPP-4阻害薬の有効性について、「非常に興味深い知見」(矢部氏)がある。 DPP-4阻害薬使用例を対象に同院 疾患栄養治療部 岩崎真宏氏らが食事の聞き取り調査を行い、4カ月間のHbA1c低下の程度を見たところ、魚介類の摂取が多い患者でHbA1cの低下が有意に大きかった。 そこで、患者の多価不飽和脂肪酸EPA、DHAの血中濃度を測定すると、EPA、DHAともに濃度が高いほど、HbA1c低下が大きいことが示された。 このような結果が見られた原因として、矢部氏はG蛋白質共役型受容体 (GPR)ファミリーの一つGPR120などのGPRの働きを指摘。 GPR120はL細胞、β細胞に存在し、EPAあるいはDHAの刺激により前者ではGLP-1、後者ではインスリンの分泌を促進する。 また、DPP-4阻害薬の長期投与例(52週間)を対象にした研究では、HbA1cの継続的な改善が認められるにもかかわらず、投与52週後のGLP-1の分泌量は、投与2週後に比べて低下していた。 一方、GIPの分泌量は52週後まで持続的な上昇が見られた。 この結果から矢部氏は「DPP-4阻害薬は、血糖値が高い場合、主にGLP-1の作用を介してインスリン分泌を促し、血糖が正常域に改善してくると、GIPが主体となって作用すると考えられる」とDPP-4阻害薬の作用機序について説明した。 GLP-1受容体作動薬によるGLP-1補充療法にも期待がよせられる。 矢部氏は「インスリン治療からの変更例で、HbA1cの改善や肥満の是正のみならず、注射回数や低血糖リスクを減らす点からも注目される」と患者のQOL向上につながる可能性を強調。 一方で、高齢者や腎機能低下者、内因性インスリン分泌能低下例では切り替えにより高血糖を起こすおそれがあることから、総合的な判断が必要であり、糖尿病専門医にゆだねられるべきと注意を促した。 出典 インクレチン関連薬の臨床知見について関西電力病院・矢部大介氏が報告 m3.com 臨床トピックス 2011.5.25 http://www.m3.com/academy/report/article/136953/ 関連資料 http://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=75315 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容) ▲
by wellfrog4
| 2011-05-28 00:22
| 糖尿病
除菌後のGERDは心配無用 ピロリ除菌後の胃酸分泌亢進による胃食道逆流症(GERD)発症を危惧する声がある。 しかし、除菌とGERD発症リスクに有意な関連は認められず、GERD患者の自覚症状が除菌で改善するとの報告もある。 ピロリ菌は胃酸を中和し、胃粘膜に炎症を引き起こして消化性潰瘍や癌を引き起こす。 そのピロリ菌を除菌すると胃粘膜が修復し、それに伴い胃酸分泌が亢進する。その結果、胃食道逆流症(GERD)が発症しやすくなると一般に考えられている。 実際、除菌薬(商品名ランサップ)の添付文書の副作用欄には「胃食道逆流」の記載がある。 ピロリ除菌とGERDについては、1997年、ドイツの研究者が非GERD患者を対象に除菌群と非除菌群を前向きに調査し、除菌群のGERD発症リスクが高いと報告したことから注目を集めた。 欧米ではGERD増は否定 しかしその後に行われた、ランダム化比較試験(RCT)では、GERD発症率に関して両群間に有意差は見られなかったとする報告が多い。 2010年1月に発表されたメタ解析でも、除菌後に新たなGERDを発症するリスクは、オッズ比1.17(95%信頼区間 0.94-1.45)となり、有意差がないことが確認された(図1)。 ![]() 図1 除菌によるGERD発症リスクに関するRCTおよびコホート研究のメタ解析 兵庫医大上部消化管内科教授の三輪洋人氏は、「除菌によりGERDが増えたと指摘した最初の論文は、フォローアップ中に潰瘍を発症した患者を解析対象から除外していた。研究デザイン上の問題があった」と指摘する。さらに同氏は、「現在、欧米では、除菌はGERD発症リスクとはならないというコンセンサスに至っている」と説明する。 ただし欧米人と日本人では、ピロリ感染による胃酸分泌への影響が異なる。 実は、ピロリ菌の感染部位によって、胃酸分泌が促進されることもあるのだ。 感染が胃前庭部に限局し、胃酸分泌を担う胃体部が損傷されていない場合、胃炎組織で産生されるサイトカインにより胃酸分泌が亢進され、高酸状態になるといわれている。 このタイプは欧米に多い十二指腸潰瘍患者で見られる。増えた胃酸が十二指腸まで流れ出して潰瘍を形成していると推測されている。 このような患者では、除菌で酸分泌が低下し、GERDが減少したという報告もある。 一方、胃体部に感染が拡大している場合には、酸分泌を担う胃底腺が傷害され、低酸になる。 このタイプは日本人に多い胃潰瘍患者で見られる。そのため、日本人でピロリ除菌後にGERDが増えるかどうかは独自に検討する必要がある。 日本人の酸分泌は多少亢進 北大光学医療診療部診療教授の加藤元嗣氏は、「各施設からの報告によると、ピロリ除菌後のフォローアップで、新たに5~10%の患者に食道の炎症が内視鏡的に認められ、うち20~30%では胸焼けなどの症状が見られる」という。 ピロリ菌感染で胃酸分泌が抑制されている患者が多い日本人では、除菌で多少、逆流性食道炎(びらん性GERD)発症リスクが高まる可能性がありそうだ。 ただし加藤氏は、新たに発症した逆流性食道炎は軽症例がほとんどで、薬物療法を必要としない場合もあれば、必要な場合でもプロトンポンプ阻害薬(PPI)投与でコントロール可能という。 また、逆流性食道炎を発症しやすいリスク因子として食道裂孔ヘルニアがあることも指摘されている。 食道への胃酸逆流が物理的に生じやすいためと考えられる。 GERD患者への除菌の影響も調べられている。 加藤氏は、「GERD患者を除菌すると、患者の自覚症状全般が改善する可能性がある」と話す。 加藤氏らが、除菌前に胸焼けなどのGERD症状を有する患者(31人)を前向きに調査したところ、除菌により患者のGERD症状は有意に改善した(図2)。 さらに、除菌後に新たに逆流性食道炎を発症した患者ですら、自覚する逆流症状は改善していた(図3)。 ![]() 図2 GERD症状を有する患者の除菌による自覚症状の変化(図3とも加藤氏による) 除菌前にGERD症状を有する患者31人を対象に、除菌前後の消化管症状評価スケール(GSRS)における酸逆流症状を調査した。その結果、除菌後の症状スコアは有意に低下。患者の逆流症状が除菌により改善したといえる。 ![]() 図3 内視鏡所見別で見たGERD症状を有する患者の除菌による自覚症状の変化 図2の患者を、除菌前後の内視鏡所見で、内視鏡所見がない正常群(非びらん性GERD、左)、除菌後に新たに内視鏡所見が生じた新規発症群(中央)、所見持続群(右)に分けて評価したところ、すべての群でスコアは低下した。 ガイドラインも除菌を推奨 三輪氏、加藤氏とも、除菌のメリットを考えれば、逆流性食道炎は除菌をためらう理由とはならないと断言する。 加えて、GERD患者へ除菌を行うことで、GERD症状の改善が示されることはあっても難治化したという報告はなく、GERD患者のピロリ除菌を躊躇する必要もないと語る。 さらに三輪氏は、「GERDは進行性の疾患ではなく、食道癌の発症リスクには直結しない」という。 日本ヘリコバクター学会のガイドライン(09年改訂版)においても、「逆流性食道炎の存在がピロリ除菌の妨げとはならない」「除菌治療後に一時的に逆流性食道炎またはGERD症状が出現または増悪することがあるが除菌治療の妨げにはならない」と明記されている。 ただし同ガイドラインでは、除菌を行う際には十分なインフォームドコンセントが必要であるとしている。 除菌前には、まれではあるが除菌後にGERDが発症する可能性を患者に説明する必要はありそうだ。 一方、ピロリ菌の感染とは関連しないGERD患者が急増中であることも認識しておきたい。 食生活の欧米化に伴い、日本人の胃酸分泌量は確実に増加しているからだ。 「日本人の10~15%程度がGERD」(三輪氏)ともいわれている。 ピロリ除菌で症状が改善すると、食欲が増し体重が増えやすいことは周知の事実。 過体重はGERDのリスク因子でもある。除菌後には生活習慣に関する指導を行うことも重要だ。 出典 NM online 2011.5.17 版権 日経BP社 ▲
by wellfrog4
| 2011-05-27 00:10
| 消化器
非心原性脳梗塞の急性期から慢性期の抗血栓療法における薬剤選択についての討議の記事で勉強しました。 急性期から慢性期の非心原性脳梗塞治療を考える 司会 安田 守孝 氏 社会医療法人協和会加納総合病院副院長 コメンテーター 中原 一郎 氏 社会保険小倉記念病院 脳卒中センター長,脳神経外科 部長 出席(五十音順) 明田 秀太 氏 大阪警察病院脳神経外科 医長 高山 勝年 氏 医真会八尾総合病院放射線科脳血管内治療科 部長 永島 宗紀 氏 医療法人寿会富永病院脳卒中センター長 藤本 憲太 氏 大阪府立急性期・総合医療センター脳神経外科 副部長 三木 義仁 氏 畷生会脳神経外科病院脳神経外科 医長 わが国の非心原性脳梗塞においては,近年,生活習慣の欧米化に伴うアテローム血栓性脳梗塞の増加が注目されるようになった。 脳血管障害(CVD)のみならず,冠動脈疾患(CAD),末梢動脈疾患(PAD)などは,症状を呈する臓器こそ異なるものの,動脈硬化性のプラーク破綻によるアテローム血栓の形成という共通の血管病態が根底にあることが知られている。 こうしたアテローム血栓性の疾患を「ATIS(Athero ThrombosIS / エイティス)」と総称し,全身疾患として包 脳梗塞急性期は病態を考慮した経口抗血小板薬を初日から開始 中原 (非心原性脳梗塞の再発予防に対する急性期の抗血栓療法) 非心原性脳梗塞の再発予防においては,病態に応じて薬剤を選択し,可能な患者さんには来院当日より経口抗血小板薬を投与しています(表1)。 ![]() 静注療法では,腎障害がなければエダラボンを投与しています。 さらにアテローム血栓性脳梗塞では主にアルガトロバンを使用しますが,ヘパリンも併用することがあります。 一方,ラクナ梗塞では主にオザグレルを静注します。 中原 (抗血小板薬の選択について) 低リスクかつ抗血小板薬の新規服用患者であればアスピリン(ASA)を投与し,ASA内服中の再発例,頸動脈病変進行例(症候性,50~70%狭窄例,不安定プラーク例など)についてはクロピドグレル(商品名:プラビックス®)を使用しています。 両剤を併用する症例もあります。 中原 (2剤併用による出血リスクについて) 抗血小板薬には抗血小板作用のみならず平滑筋増殖抑制作用,内皮機能増強作用などの多面的作用を有する薬剤もありますので,どの時期にどういった薬剤を選択するかということまで考慮して使い分けるようにしています。 クロピドグレルとASAの併用については,CARESSとCLAIRの両試験においてASA単独投与に比べ,クロピドグレルとASAの併用で微小塞栓信号(MES)ならびにイベント発生率の低下が認められています〔Markus H, et al. Circulation 2005; 111(17): 2233–2240 / Wong KS, et al. Lancet Neurol 2010; 9(5): 489-497〕。 また,一過性脳虚血発作(TIA)を対象に早期治療介入による二次予防効果を見たEXPRESS試験では, TIAを急性期疾患として発症から中央値1日で治療開始した早期治療群は,発症から中央値20日後に治療開始した遅延治療群に比べ以後の脳卒中発症リスクが80%も低下することが示されました〔Rothwell PM, et al. Lancet 2007; 370(9596): 1432-1442〕。 この早期治療群の約半数にクロピドグレルとASAが併用されていたことも,クロピドグレルとASAの併用を考慮する理由の1つです。 クロピドグレルとASAの併用 急性期の短期併用のメリット 中原 抗血小板薬を併用すれば出血リスクは高まることを懸念される先生もいらっしゃると思います。しかしクロピドグレルとASAの併用に関しては,FASTER試験において少なくとも脳卒中急性期の1カ月間において両薬を併用しても出血イベントの増加は認められていないので,急性期におけるクロピドグレルとASAの短期的併用の有用性は期待できます〔Kennedy J, et al. Lancet Neurol 2007; 6(11): 961-969〕。 一方,頭蓋内動脈狭窄に対する抗血小板療法の有用性を検討したTOSS-2試験において,全心血管イベントの発生という点ではASA+クロピドグレル群の方がイベント抑制効果が高い傾向が見られました。 併用する抗血小板薬の選択については今後の検討課題だといえます。 また脳梗塞再発予防についてCSPSⅡ試験では,治療開始後早期段階におけるイベント抑制効果はASA群の方がやや高い傾向が見られていることなどもタイミングと薬剤選択を考える上で注目すべき点です。 クロピドグレルは慢性期の長期管理に適している 中原(非心原性脳梗塞治療における慢性期の抗血小板療法について) 脳卒中治療ガイドライン2009では,ご承知のように慢性期脳梗塞再発予防における抗血小板療法としてアスピリン,クロピドグレルがグレードAで推奨されています(表2)。 ![]() 高山 (急性期に併用していた抗血小板薬を慢性期に入って減らす場合の1剤は何か) 以前はアスピリンを残していましたが,無症候性の消化管出血が多いことから,クロピドグレルまたはシロスタゾールを残しています。 明田 今後一生にわたり長期服用していただくことを考えると,抗血小板作用の強さおよび副作用の面を考慮してクロピドグレルを残すのが望ましいとわたしも思います。 永島 わたしはクロピドグレル,シロスタゾールのいずれかを選択していますが,先ほど中原先生からお話のありましたTOSS-2の結果を踏まえますと,今後はクロピドグレルを使う症例が多くなると考えます。 藤本 わたしも強い抗血小板作用を期待でき副作用による脱落も少ないクロピドグレルをできるだけ使うようにしています。 三木 脳梗塞患者には心疾患を合併している方も多いです。 心臓の危険因子のある方にはリスク管理を徹底した上で,慢性期に1剤残す抗血小板薬ということになれば,心臓への影響が比較的少ないクロピドグレルが有力と考えます。 アテローム血栓症は全身疾患 ATISの観点から薬剤選択を 中原 近年,CVD,CAD,PADをATISという概念の下に包括的に理解しようという機運が高まっています(図)。 全身の血管は同じリスクにさらされており,脳にイベントが生じればCAD,PADなどの予防についても念頭に置く必要があります。 クロピドグレルはCAPRIE試験においてCVD,CAD,PADに対する有用性が証明され,心臓に悪影響を比較的及ぼしにくいため,脳梗塞慢性期に投与する意義は大きいと思います。 ![]() 出典 MT Pro 2011.5.19 版権 メディカルトリビューン社 ▲
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| 2011-05-26 00:15
| 神経内科
日本人におけるインスリン治療の実態が明らかに――CREDIT試験から インスリン療法における心血管リスクを検討したCREDIT試験について、追跡1年後における日本人のデータが発表された。 5月19日から札幌で開催されている日本糖尿病学会(JDS2011)で、日本におけるインスリン導入の実態について順天堂大学大学院の河盛隆造氏が、インスリンレジメンの特徴について大阪医科大学糖尿病代謝・内分泌内科の花房俊昭氏が、それぞれ発表した。 平均12年の罹病歴、平均HbA1c値(JDS値、以下同)10%でインスリン導入され、1年後に著明な血糖コントロールの改善が得られている実態が明らかにされた一方で、さらなる改善のためには、レジメンの検討が求められることが示された。 CREDIT(the Cardiovascular Risk Evaluation in people with Type 2 Diabetes mellitus on Insulin Therapy)試験は、インスリン療法による血糖コントロールと心血管イベント発症率との関連を実臨床下で検討した大規模観察研究で、日本を含む12カ国・314施設で実施され、登録患者3031人の患者が登録された。12カ国の中で最も多い日本人528人のうち、適格とされた511人(16.9%)の追跡1年後の成績が発表された。 日本人の対象は、40歳超でインスリン治療歴が6カ月未満の2型糖尿病患者で、63施設のインスリン治療に携わる医師が参加している。 登録患者の94.3%は糖尿病専門医が担当しており、入院が63.6%、外来は29.2%だった。 また、インスリン導入の理由は87.7%が血糖コントロールの不良だった。 患者背景は、平均年齢が62.2歳、男性が63.8%で、糖尿病の罹病期間は11.8年、インスリン導入時のHbA1c値は10.3%だった。 糖尿病合併症に関しては、神経障害52.1%、網膜症41.1%、顕性蛋白尿36.6%などであり、「83.4%の患者がインスリン導入時に細小血管障害を有している点が、日本の糖尿病治療における重大な問題である」と河盛氏は強調した。 一方、症候性の大血管合併症は25.1%に認められた。 インスリン導入時のレジメンは、混合型が36.8%と最も多く、基礎インスリンとの併用(26.2%)および単剤(25.4%)を併せた51.6%が速効型インスリンを含むレジメンで導入されており、基礎インスリン単剤が51.6%を占める世界全体の傾向とは異なる日本の特徴と考えられた。 これは、基礎インスリンとして試験実施時には、NPHインスリンが多く使用されており、持効性インスリンであるグラルギンなどがまだ普及する前であることが影響している。 血糖コントロール指標は、HbA1c値が登録時の10.3%から1年後には7.5%へと低下、空腹時血糖(FPG)が217.3mg/dLから139.0mg/dL、食後血糖(PPG)が296.1mg/dLから178.2mg/dLへと、いずれも有意に低下した(p<0.001)。 HbA1c値7.0%未満の達成率をインスリン導入時の罹病期間別にみると、5年未満では46.3%に対し、15年以上では35.6%と、罹病期間が長いほど治療効果が得られにくいことが明らかとなった。 また、インスリン導入時のHbA1c値別でみると、8.0%以下の患者ではHbA1c値7.0%未満の達成率が60.0%だったのに対し、12.1%以上の患者では39.7%と、HbA1c値が高いほど治療効果が得られにくいことが明らかとなった。 続いて登壇した花房氏は、インスリン導入時のレジメンを1年間維持できた患者の血糖コントロール状況、インスリンを離脱できた患者の特徴について発表した。 導入時のレジメン別で1年後のレジメン維持率をみると、基礎インスリン単剤で62.5%、基礎インスリン+速効型で42.1%、速効型単剤で36.8%、混合型で88.3%だった。 導入時のレジメンを維持していた患者(レジメン維持例)における血糖コントロール指標をみると、HbA1c値、FPG、PPGは、いずれのレジメンにおいても減少した。 HbA1c値7.0%未満の達成率は36.5%で、レジメン別では、基礎インスリン+速効型46.2%および速効型単剤45.0%に比較して、基礎インスリン単剤で30.0%、混合型では31.8%とやや低かった。 しかし、「いずれのレジメンにおいても1年後のFPGが140mg/dL前後という点から考えて、インスリン治療のさらなる改善が求められる」と花房氏は述べた。 レジメン維持例における低血糖の発現率は、混合型で22.7%とやや高い傾向が認められたが(維持例全体で20.2%)、レジメン間に有意な差はなかった。 また体重は、基礎インスリン単剤を除いて増加しており、特に基礎インスリン+速効型(+2.1kg、p<0.01)および混合型(+1.3kg、p<0.001)では有意な増加を認めた。 1年後までにインスリン療法から離脱した患者は27人。 導入時のレジメン別では、基礎インスリン+速効型で8.7%と最も多く、速効型単剤で7.2%、混合型は3.3%、基礎インスリン単剤が3.1%だった。 インスリン離脱例では、HbA1c値が10.5%から6.8%に低下し、HbA1c値7.0%未満の達成率は70.4%、低血糖の発現率は8.3%と良好な治療成績を示し、体重は63.3kgから61.3kgへと減少していた。 本試験の対象は、ほとんどが糖尿病専門医による登録患者であり、紹介までの期間が長い可能性が推測されることから、より早期のインスリン導入のためにプライマリケア医に対する啓蒙が求められることが示された。 また、インスリン導入時におけるレジメンのさらなる検討が必要であることも明らかになった。 今後、4年間の観察・評価が行われる中で、インスリン療法による血糖コントロールと心血管イベントの発症、およびそれらのリスク因子との関連が明らかになることが期待される。 (日経メディカル別冊編集) 出典 NM online 2011.5.21 版権 日経BP社 ▲
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| 2011-05-25 00:21
| 糖尿病
甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン(商品名:レボチロキシンナトリウム、チラーヂン)で治療中の高齢患者は、以前に使用経験のある患者よりも骨折リスクが高く、高~中用量群の患者は低用量群に比べてリスクが上昇していることが、カナダ・トロント大学のMarci R Turner氏らの調査で示された。 甲状腺機能低下症で長期にレボチロキシン投与中の高齢患者の中には、過剰治療の状態にある者がおり、これらの患者は医原性の甲状腺機能亢進症を来す可能性があるという。 また、高用量のレボチロキシンや無症候性甲状腺機能亢進症によって骨密度が低下し、転倒や骨折のリスクが上昇することが示唆されている。BMJ誌2011年5月7日号(オンライン版2011年4月28日号)掲載の報告。 レボチロキシン使用による骨折リスクを評価するコホート内症例対照試験 研究グループは、レボチロキシンの用量が高齢者の骨折リスクに及ぼす影響を評価するコホート内症例対照試験(nested case-control study)を実施した。 2002年4月1日~2007年3月31日までにレボチロキシンを処方された70歳以上の高齢患者について、2008年3月31日まで骨折のフォローアップが行われた。 この間に骨折で入院した患者コホートを、骨折を起こしていないコホートから選ばれた最大5人の対照とマッチさせた。 主要評価項目は、レボチロキシン使用(現在使用中、最近まで使用、以前に使用)による骨折(手首/前腕、肩/上腕、胸椎、腰椎/骨盤、股関節/大腿骨、下肢/足関節)とした。レボチロキシン使用中の群は、骨折前年の用量(高[>0.093mg/日]、中[0.044~0.093mg/日]、低[<0.044mg/日])で比較した。 高~中用量群の骨折リスクは低用量群の2~3倍に レボチロキシン使用者21万3,511人(平均年齢82歳)のうち、平均フォローアップ期間3.8年の時点で2万2,236人(10.4%)が骨折を起こし、そのうち1万8,108人(88%)が女性であった。 現在使用中の患者は2万514人(92.3%)で、このうち高用量群が6,521人(31.8%)、中用量群が1万907人(53.2%)、低用量群は3,071人(15.0%)であった。 多数のリスク因子で調整しても、以前に使用経験のある者に比べ、最近まで使用していた者は骨折リスクが有意に高かった(調整オッズ比:1.88、95%信頼区間:1.71~2.05)。 現在使用中の患者では、高用量および中用量の群は、低用量群に比べ骨折リスクが有意に上昇していた(それぞれ、調整オッズ比:3.45、95%信頼区間:3.27~3.65、同:2.62、2.50~2.76)。 著者は、「現在レボチロキシン治療中の70歳以上の高齢患者では、強い用量-反応関係をもって骨折リスクが上昇していた」と結論し、「過剰治療を回避するには、治療中の用量のモニタリングが重要」と指摘する。 (菅野守:医学ライター) 原文 Turner MR et al. Levothyroxine dose and risk of fractures in older adults: nested case-control study. BMJ. 2011 Apr 28;342:d2238. doi: 10.1136/bmj.d2238. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21527461 出典 Care Net.com 2011.5.20 版権 Care Net ▲
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| 2011-05-24 00:30
| リハビリテーション科
単純性急性虫垂炎の治療におけるアモキシシリン+クラブラン酸による抗生物質治療の効果は、緊急虫垂切除術よりも劣っており、現在でもgold standardは虫垂切除術であることが、フランス・アントワーヌ・ベクレール病院のCorinne Vons氏らの検討で明らかとなった。 急性虫垂炎は、急性の腹痛で入院した患者の中で手術を要する頻度が最も高い疾患だという。 4つの無作為化試験をはじめいくつかの検討で、単純性急性虫垂炎は抗生物質治療で治癒が可能であり、1次治療となる可能性もあることが示唆されている。Lancet誌2011年5月7日号掲載の報告。 抗生物質治療の虫垂切除術に対する非劣性試験 研究グループは、単純性急性虫垂炎の治療における抗生物質治療(アモキシシリン+クラブラン酸)の緊急虫垂切除術に対する非劣性を検証する非盲検無作為化試験を実施した。 2004年3月11日~2007年1月16日までに、フランスの6つの大学病院からCT検査で診断された18~68歳の単純性急性虫垂炎患者が登録された。 これらの患者が、アモキシシリン+クラブラン酸(体重90kg未満:3g/日、90kg以上:4g/日)を8~15日間投与する群あるいは緊急虫垂切除術を施行する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、介入後30日以内の腹膜炎の発生率とした。 主要評価項目:8% vs. 2% 243例が登録され、123例が抗生物質治療群に、120例は虫垂切除術群に割り付けられた。 介入前に早期脱落した4例を除外した239例(抗生物質治療群120例、虫垂切除術群119例)がintention-to-treat解析の対象となった。 30日以内の腹膜炎の発生率は、抗生物質治療群が8%(9/120例)と、虫垂切除術群の2%(2/119例)に比べ有意に高かった(治療群間差:5.8例、95%信頼区間:0.3~12.1)。 虫垂切除術群では、事前にCT検査による評価を行ったにもかかわらず、予想外にも手術時に119例中21例(18%)が腹膜炎を伴う複雑性虫垂炎であることが判明した。 抗生物質治療群120例のうち14例(12%、95%信頼区間:7.1~18.6)が30日以内に虫垂切除術を施行され、この14例と30日以内に追跡を中止した4例を除く102例のうち30例(29%、同:21.4~38.9)が30日~1年までの間に虫垂切除術を受けた。 前者のうち急性虫垂炎であったのは13例(再発率:11%、同:6.4~17.7)、後者では26例であった(同:25%、18.0~34.7)。 著者は、「急性虫垂炎の治療におけるアモキシシリン+クラブラン酸による抗生物質治療の緊急虫垂切除術に対する非劣性は確認されなかった。現在でも、緊急虫垂切除術は単純性急性虫垂炎の治療のgold standardである」と結論し、「CT検査に関する予測マーカーが同定されれば、抗生物質治療が有効な患者の選出が可能になるかもしれない」と指摘している。 (菅野守:医学ライター) 出典 Care Net.com 2011.5.19 版権 Care Net 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容) ▲
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| 2011-05-23 00:24
| 感染症
アセトアミノフェンの長期連用で造血器腫瘍のリスクが約2倍に 米VITAL study 米ワシントン大学のRoland B. Walter氏らは市販のかぜ薬などに含まれるアセトアミノフェンの高頻度かつ長期の連用により,一部の造血器腫瘍(hematologic malignancies)のリスクが約2倍に上昇していたとの前向き研究の結果を米国臨床腫瘍学会誌(J Clin Onco5月9日オンライン版)に報告した。 同研究は米の大規模調査Vitamins and Lifestyle(VITAL) studyに参加した50~76歳の男女6万4,839例を対象に実施された。 Long-Term Use of Acetaminophen, Aspirin, and Other Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs and Risk of Hematologic Malignancies: Results From the Prospective Vitamins and Lifestyle (VITAL) Study. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/21555699 アスピリン・その他のNSAIDの長期連用と造血器腫瘍との関連見られず アスピリンやその他の非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の長期使用と大腸がんや前立腺がん,肺がんなど複数のがんのリスク低下の関連がこれまで報告,これらの薬剤が化学予防としても有用な可能性が指摘されている。 一方,造血器腫瘍とこれらの薬剤の関連については一貫した結果が得られておらず,最も広く用いられているアセトアミノフェンでは少数例の検討でネガティブな結果も報告されているとWalter氏ら。 2000~02年,VITAL studyに登録された50~76歳の男女のうち,ベースライン時にがん(非メラノーマ皮膚がんを除く)の既往があった人およびがんに関する情報がなかった人は除外された。 登録前10年間におけるNSAIDの服用頻度や健康状態をアンケートで調査,回収した。 調査対象の薬剤は低用量アスピリン(81mg),通常用量または高用量アスピリン,イブプロフェン,ナプロキセン,セレコキシブまたはロフェコキシブ,ピロキシカム,インドメタシン,アセトアミノフェン。 全米のがん登録(Surveillance, Epidemiology and End Results:SEER)で確認された造血器腫瘍発症の割合は全6万4,839例中577件(0.89%)。 年齢,性,関節リウマチの既往や片頭痛,白血病・リンパ腫の家族歴などによる補正※を行い,それぞれの薬剤の服用頻度と各種造血器腫瘍発症との関連を検討した。 その結果,アセトアミノフェンの高頻度かつ長期連用(週4回以上の服用が4年以上)群における造血器腫瘍のハザード比(HR)は1.84(95%CI 1.35~2.50,P trend=0.004)と有意に上昇していた。 また,同群における骨髄異形性症候群(MDS)や急性骨髄性白血病などの骨髄系腫瘍のHRは2.26(同1.24~4.12),非ホジキン性リンパ腫のHRは1.81(同1.12~2.93),形質細胞疾患(plasma cell disorders)のHRは2.42(同1.08~5.41)であった。 なお,慢性リンパ性白血病または小リンパ球性白血病のHRは0.84(同0.31~2.28)と有意な上昇は見られなかった。 アスピリン,その他のNSAID,イブプロフェンと各種造血器腫瘍発症との有意な関連は見られなかった。 同氏らはアセトアミノフェンの高頻度かつ長期の使用は,一部の造血器腫瘍発症では約2倍のリスク上昇と関連していたと結論。 一方,造血器腫瘍の予防という観点ではアスピリンやその他のNSAIDは有用ではないかもしれないとしている。 出典 Medical Tribune 2011.5.19 版権 メディカル・トリビューン社 <私的コメント> 個人的な話で恐縮ですが、慢性頭痛で結構SG配合顆粒(アセトアミノフェン含有)を常用しています。 明日からは、バイアスピリンで我慢します。 ご存知のように、SG配合顆粒は「セデスG」の後継品です。 「セデスG」は腎障害を起こしやすいフェナセチンを含有しているということでSG配合顆粒になりました。 結局、こちらも問題ということなんですね。 <アセトアミノフェン 関連サイト> アセトアミノフェンに小児喘息との関係認められず 出典 Medical Tribune 2011.5.19 ■幼少期のアセトアミノフェン(パラセタモール)使用は小児喘息のリスクとは関係しないと,オーストラリアのグループがBMJの2010年10月2日号に発表した。 Paracetamol use in early life and asthma: prospective birth cohort study. Lowe AJ, et al. BMJ 2010; 341: c4616. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20843914 アセトアミノフェンが冠動脈疾患患者の血圧上昇を誘発 出典 Medical Tribune 2010.11.11 ■アセトアミノフェンは冠動脈疾患(CAD)患者の血圧上昇を誘発すると,スイスのグループがCirculationの11月2日号に発表した。 Acetaminophen increases blood pressure in patients with coronary artery disease. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20956208 Sudano I, et al. Circulation 2010; 122: 1789-1796. FDAが処方薬におけるアセトアミノフェン含有量を制限,枠囲み警告も 過剰使用による肝毒性リスクを受け 出典 Medical Tribune 2011.1.14 ■解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンは,多様な処方薬,OTC薬に配合されており,過剰使用や過剰処方が起きやすいことが指摘される。 米食品衛生局(FDA)は昨日(1月13日),製薬会社に対し,アセトアミノフェンの過剰使用により深刻な肝障害が発生していることを踏まえ,処方薬における同成分の含有量を上限325mgとし,ラベルに枠囲み警告を含めるよう要請した。 今回の勧告では,既にラベル警告を義務付けられているOTC薬は影響を受けない。 アセトアミノフェンが小児の喘息やアレルギーの危険因子の可能性 出典 Medical Tribune 2011.2.3 ■アセトアミノフェンの使用が小児の喘息やアレルギー疾患と関係している可能性があると,国際共同研究グループがAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicineの1月15日号に発表した。 Acetaminophen use and risk of asthma, rhinoconjunctivitis, and eczema in adolescents: International Study of Asthma and Allergies in Childhood Phase Three. Beasley RW, et al. Am J Respir Crit Care Med 2011; 183: 171-178. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20709817 <私的コメント> 小児のインフルエンザに対する解熱剤はアセトアミノフェンです。 今や成人に対してもアセトアミノフェンが多く処方されます。 成人に処方する臨床的意義はちょっとわかりません。 いずれにしろ、こういったアセトアミノフェンの安全神話に落とし穴があったというわけです。 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容) ▲
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| 2011-05-21 00:18
| 血液内科
Acid suppression with proton-pump inhibitors or histamine-2 blockers heightensrisk for pneumonia in hospitalized patients. In the inpatient setting, acid-suppressing agents (proton-pump inhibitors [PPIs] and histamine-2 [H2]-blockers) are prescribed prophylactically for very high—risk patients to prevent stress ulcer—related gastrointestinal bleeding and, in many instances, are overprescribed compared with guideline recommendations (Aliment Pharmacol Ther 2006; 23:1365). This practice might be problematic, because studies have suggested excess risk for pneumonia in patients who receive acid-suppressing agents (JAMA 2009; 301:2120). To estimate risk for pneumonia in patients who received acid-suppressing agents, investigators summarized data from 8 observational studies and 23 randomized controlled trials (RCTs). The observational data suggested that both PPIs and H2-blockers significantly raise risk for pneumonia; excess risk associated with PPIs occurred mainly within the first week of use. All the RCTs were hospital-based studies of H2-blocker use: Meta-analysis showed that H2-blockers led to significant excess risk for pneumonia (number needed to harm, 32). COMMENT Although this study highlights one complication of prescribing acid-suppressing agents (others include risks for Clostridium difficile colitis [Arch Intern Med 2010; 170:751] and fractures [Arch Intern Med 2010; 170:765]), the investigators did not analyze the relative benefits of these agents for preventing clinically important stress ulcer—related bleeding or for other indications. This study emphasizes that acidsuppressing medications are not benign and that prescribing them in hospitalized patients without clear guideline-based indications for prophylaxis (e.g., intubation >48 hours, severe sepsis, coagulopathy [international normalized ratio >1.5], thrombocytopenia [platelet count <50,000 cells/mL]) can be harmful. — Daniel D. Dressler, MD, MSc, SFHM Eom C-S et al. Use of acid-suppressive drugs and risk of pneumonia: Systematic review and metaanalysis. CMAJ 2010 Dec 20; [e-pub ahead of print]. (http://dx.doi.org/10.1503/cmaj.092129) http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/doctors/hotnews/jwhospital/201105/519493.html?ref=RL2 ▲
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| 2011-05-20 00:49
| 消化器
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