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きょうは、H. pyloriに関する最新の知見の記事で勉強しました。 長い間,胃の疾患原因として確定したものはなく,多くの要因が関与していると推定されていました。しかし,1982年に発見されたHelicobacter pylori(H. pylori)が胃炎,胃・十二指腸潰瘍,胃がんの原因の大半を占めると考えられるようになりました。 その後,2000年11月からは胃・十二指腸潰瘍で除菌による原因療法が保険適用になりました。 2008年にわが国からH. pylori除菌により胃がん予防が可能であるとLancetに報告し,それを受けて日本ヘリコバクター学会はH. pylori感染症をすべて除菌の適応とした画期的なガイドラインを公表しました。 団塊の世代で感染率が高い H. pyloriの正確な感染経路についてはまだ不明です。 しかし,H. pyloriの経口摂取により胃炎が生じることは明らかであること,生育できるのは胃粘膜組織のみであることなどから,経口感染が大半を占めていることが考えられます。 健康人の感染率は,年代が増すとともに上昇することが明らかになっていますが,国や地域で大きな差があります。 衛生環境のよくない発展途上国では若い年齢層から感染率が高く,年代別の変化がほとんどないと言われる一方,欧米諸国では若い年齢層に感染はほとんど認められず,年齢を経るごとに増加傾向を示します。 わが国では慢性萎縮性胃炎の原因の90%以上をH. pyloriが占めると考えられています。 つまり,これまで日本人の国民病と言われてきた慢性萎縮性胃炎の原因は加齢ではなかったのです。 わが国では,欧米諸国と途上国の中間のパターンを示すことが明らかになってきました。 10~20歳代の若年世代では,感染率は20%以下と低いのに対し,50歳代後半から60歳代前半の団塊の世代では約80%ときわめて高いのです(図1)。 将来は確実に欧米型になるでしょう。 3剤併用療法により除菌 除菌により,胃・十二指腸潰瘍の再発が維持療法なしでも抑制されることが明らかになりました。 わが国では,十二指腸潰瘍の95%,胃潰瘍の90%以上がH. pylori陽性です。 保険適用ではなかったため,除菌療法ができない時代が続いていましたが,2000年からようやく胃・十二指腸潰瘍に限り保険で行えるようになりました。 H. pyloriは,胃粘膜表層や粘液中にすみ着いているので,単独の抗菌薬での駆除が難しい細菌です。 そのため,3剤併用療法が行われています。一次除菌療法はプロトンポンプ阻害薬(PPI)+アモキシシリン(AMPC)+クラリスロマイシン(CAM)の1週間投与,二次除菌療法はPPI+AMPC+メトロニダゾール(MNZ)を1週間投与することになっています。 わが国で行われた大規模臨床試験の除菌率は約90%で,おもな副作用は軟便と下痢でした。 現在の大きな問題点は,CAMに対する耐性菌の頻度が年々上昇していることです。 (詳細は,日本ヘリコバクター学会のガイドラインを参照) 胃がんのほとんどはH. pylori感染によって発症 大きな注目を集めているのは,H. pylori感染と胃がんのかかわりです。 疫学的にはほぼ証明され,1994年に世界保健機関(WHO)は,H. pyloriを確実な発がん物質に指定しました。 また,動物に長期間感染させて胃がんを発生させることに成功した知見がわが国から相次いで報告されました。 胃がんは正常な胃粘膜からは発生せず,慢性萎縮性胃炎や腸上皮化生のある粘膜から発生しやすいことが明らかになっています(図2)。 H. pyloriに感染していなければ胃粘膜萎縮は発生しにくく,したがって胃がんの発生率も低くなります。 実際,これまでのわが国のデータをもとにした計算では,陽性の人が胃がんになる確率は陰性者の約20倍と言われています。 食塩と胃がんのかかわりは以前から指摘されていましたが,H. pylori陰性の場合は,相当量の食塩を摂取しても発生しにくいことが最近明らかになりました。 したがって,胃がん発生の主因は食塩ではなく,H.pylori感染であることは間違いないと思われます。 これまでヒトでは除菌による胃がん発生の予防効果について,科学的に十分な研究が行われていませんでした。 2008年にわが国の研究者が総力を挙げて行った大規模多施設試験で,内視鏡的粘膜切除術(EMR)を受けた早期胃がん患者を除菌群と非除菌群にランダムに割り付け,3年後の異所性再発を調べた結果,除菌群で再発を有意に抑制したとの結果がLancetに報告されました。 この結果を受けて,日本ヘリコバクター学会では,診断と治療のガイドラインですべてのH. pylori感染症を除菌適応疾患とするかどうかについて議論し,全員一致で適応疾患とすることに決定しました。 最近では,H. pylori感染と胃悪性リンパ腫,ことに粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫とのかかわりも急速に明らかになってきました。 除菌によりリンパ腫が消失した例が国内外から多数報告されています。 したがって,日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも除菌の適応疾患に指摘されています。 さらに,胃以外の疾患とのかかわりも話題になっています。 鉄剤に不応の小児の鉄欠乏性貧血,突発性血小板減少性紫斑病(ITP),慢性蕁麻疹などの疾患では除菌によって改善を示す例が報告され,H. pyloriによる直接侵襲以外の発生機序が示唆されるようになってきました。 特にITPに関しては,日本血液学会のガイドラインで除菌薬が第一選択薬として推奨されています。 幸いなことに今年6月18日から,胃MALTリンパ腫,ITPおよび早期胃がん内視鏡手術後の3疾患での除菌が新たに保険適用になりました。 感染者全員が治療の対象に 国内のH. pylori感染者は人口の約半数とされています。 感染者全員が前述の疾患を併発するのではありませんが,併発リスクの高い集団であることは事実です。 そして,除菌に成功すると,組織学的胃炎が改善して,胃・十二指腸潰瘍や胃がんなどの予防に結び付くことが期待されます。 したがって,併発していない場合でも,予防医学の観点からは原則,感染者全員が治療の対象になりうるのです。 H. pylori感染症を1つの疾患単位として認め,関連疾患の診断・治療を臨床現場で可能にした場合,わが国の最も大きな疫学的課題である胃がん予防にも大きく貢献する可能性が高いこと,さらに根治療法である除菌療法では疾患の再発頻度が激減しますので,将来的に医療費の削減につながると考えられます。 ただし,薬剤耐性のために除菌に失敗することや,さまざまな副作用のために治療を中止せざるをえないこともあるため,除菌治療を行う際には十分な説明を行い,患者に納得してもらうことが必要になります。 そのため,当大学病院では昨年,「H. pylori専門外来」を開設しました。 検査や除菌療法の費用は保険が適用できないので全額自己負担となります。 最近は,全国で専門外来を開設する施設が増加しつつあります。 出典 Medical Tribune 2010.7.15 版権 メディカルトリビューン社 <きょうの一曲> Falling in Love with Love Helen Merrill - Falling in Love with Love http://www.youtube.com/watch?v=NCOktwy5_QY&feature=related Falling In Love With Love - The Supremes http://www.youtube.com/watch?v=0bXQJeHMgYU&feature=fvw Oscar Peterson: Falling in Love with Love http://www.youtube.com/watch?v=2HcV_azEf5A&feature=related 国武久己 『青い幻影』 版画 http://www.seikougarou.co.jp/sell/kunitakehisami/642.html 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容) 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/
by wellfrog4
| 2010-10-14 00:55
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