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北里研究所病院糖尿病センター の山田 悟先生の記事で勉強しました。 ピオグリタゾンの膀胱がんリスク」を考察する フランスの新規処方禁止勧告を受けて 問題の背景:見えない情報が不安と憶測,不適切な判断を生みかねない 6月11日の日本経済新聞紙面に掲載された「フランスの行政当局は『アクトス(ピオグリタゾン)服用で膀胱がんの発症リスクがわずかに高まる』との調査結果をもとに,糖尿病患者へ新たに処方しないように武田薬品工業の仏子会社へ指示した」との記事が出た。 今回の仏医薬品庁(Afssaps)の決定は,同国内での疫学調査CNAMTS(Caisse d’assurance maladie de travailleurs salaries)に基づくものであるが,この試験の結果は現時点では英文でのpublicationがない。よって,情報は不十分なのであるが,見えない情報が不安と憶測をもたらし,不適切な判断を生むことだけは避けたいと考え,現時点でわたしの知りうる情報を,それに関連する文献とともに提示し,わたしなりに考察してみたい。 ポイント1:勧告の根拠は仏国内疫学調査CNAMTS ピオグリタゾンは発売前の研究において,雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告された。 しかし,この作用は雌ラットでは確認されず,また,雌雄を問わずマウスでも確認されなかったので,雄ラットに特有の現象と考えられていた。 ところが,ピオグリタゾンの動脈硬化症の予防効果を証明したとされるPROActive試験(Lancet 2005; 366: 1279-1289)において,有意ではないもののピオグリタゾン群での膀胱がんの増加が示唆されたこともあり,各国でピオグリタゾン使用患者での膀胱がんの発症率を検討する疫学試験が計画された。 CNAMTSは仏国内の保健データベースであるSNIIRAM(System national interregimes de l’assurance maladie)内の約150万人の糖尿病患者(年齢40~79歳)に関する2006~09年のデータを用いて,膀胱がんの発症率を検討した後ろ向きコホート研究である。 登録された糖尿病患者は149万1,060人であり,うち15万5,535人がピオグリタゾン内服患者(男性53.8%)であり,133万5,525人がピオグリタゾン非内服患者(男性53.4%)であった。 ピオグリタゾン非内服患者のうち68.2%がメトホルミン,55.5%がスルホニル尿素(SU)薬,27.6%がインスリンを使用していた。 ポイント2:男性ではピオグリタゾン内服患者で膀胱がんリスクが上昇 各種糖尿病薬の投与患者における膀胱がんの発症率を,当該薬剤以外の薬剤投与患者における膀胱がんの発症率と比較して得られたハザード比(HR)は以下の通りであった(表1)。 fig このデータからピオグリタゾンは男性において膀胱がんのリスクが有意に上昇していると判定された。そこで,ピオグリタゾンの投与期間や累積投与量で分類してリスクの上昇の程度を検討したところ,HRは以下の通りであった(表2,3)。 fig fig 山田先生の考察1:米国のKPNC試験やAERSでも類似の結果だが… 前述のように,ピオグリタゾンの持つデメリットとして膀胱がんの可能性が雄のラットで指摘されていたために,ほかにも両者の関係を検討する試験が実施されている。 KPNC(Kaiser Permanente Northern California)試験は,米食品医薬品局(FDA)の要請を受けて武田薬品工業が米国カリフォルニア州で実施しているピオグリタゾンと膀胱がんの関係を評価するための疫学研究である。 10年間の試験期間が予定されており,今年(2011年)4月号のDiabetes Careにその5年時での中間解析結果が報告されている(Diabetes Care 2011; 34: 915-922)。 それによると,1997~2002年に登録された19万3,099人の患者のうち,ピオグリタゾン内服患者3万173人をピオグリタゾン非内服糖尿病患者16万2,926人と比較したところ,全体では有意な膀胱がんの増加は認められなかった(HR 1.2,95%CI 0.9~1.5)ものの,2年以上使用している患者では有意なリスクの増加が認められていた(同1.4,1.03~2.0;表4,5)。 fig fig また,FDAの副作用報告(AERS)を後ろ向きに解析した研究 (Diabetes Care 2011; 34: 1369-1371)では,オッズ比(OR)は4.30(2.82~6.52)でピオグリタゾン使用者での膀胱がんの発生報告が有意に多かった。 ただし,この研究ではアカルボース(OR 5.12倍)やグリクラジド (同3.56倍)でも膀胱がんの発生頻度が有意に高くなっており,興味深いことに,グリクラジドが有意にORが高かった一方で,グリベンクラミドは0.33と有意にORが低かった。 私の考察2:今の時点でのピオグリタゾンの中止は不要であろう こうして見てみると,いずれの試験においても,全体もしくは部分的な集団においてピオグリタゾン内服者での膀胱がんの増加が報告されている。 したがって,ピオグリタゾンの膀胱がん増加に対する懸念を払拭することはできない (‘白’とは言えない)。 しかし,はっきりと膀胱がんを増加させているのかと問われれば,それも今の時点では断言できないであろう (‘黒’とも言えない)。 CNAMTSについては,ピオグリタゾン内服女性のHRは (統計学的に有意ではないが)1を下回っており,かつ累積投与量や投与期間が大きくなるにつれてHRが大きくなっておらず,ピオグリタゾンが生物学的に膀胱がんを増加させているという印象を持てない。 KPNCについては,武田薬品工業がサポートについている試験での負の作用の報告で信憑性が高いが,中間報告における2年以上使用している患者でのぎりぎりで統計学的に有意なHRの上昇であり,最終報告を待ちたいところである。 FDAのAERSについては,報告バイアスがあり,有害作用の発症率の計算に使用してはいけないデータである。同じスルホニル尿素 (SU)薬であるグリクラジドとグリベンクラミドの膀胱がんに対する相違 (片や有意な上昇で,片や有意な低下)を見ても,データが科学的な作用と一致するかに疑問がある。 また,同じデータベースを用いて解析された先日のElashoffらのインクレチン関連薬に関するがんの報告 (インクレチン関連薬の膵炎・腫瘍リスク)を見ても,それぞれの薬剤で注目されている有害作用の報告がどうしても多くなる気がする。 そう考えると,黒と断言できない膀胱がんを恐れて,新規処方を停止したという仏行政当局の決定は時期尚早に思える。 一方,同国政府の決定はあってもピオグリタゾンの使用には制限を加えず,モニタリングを続けるという欧州医薬品庁(EMA)やFDAのスタンスに共感を覚える。 今の時点では,ピオグリタゾンが膀胱がんへのデメリットを持つ可能性は否定できないが,臨床上得られるメリットとのバランスを考えながら,慎重に処方していくというスタンスが大切であろう※。 ※ KPNC試験の結果からは,ピオグリタゾンを糖尿病患者1万人に1年間投与したときに予想される膀胱がん発症リスクが1.27人増加することになり,PROActive試験の成績からは,ピオグリタゾンを大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者1万人に1年間投与することで心筋梗塞が約40人,主要な動脈硬化症(心血管死,心筋梗塞,脳卒中)が約70人減少することが示唆される。 出典 MT pro 2011.6.14 版権 メディカル・トリビューン社 読んでいただき有り難うございます。 コメントもよろしくお願いします。 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
by wellfrog4
| 2011-06-27 00:53
| 糖尿病
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