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インクレチン関連薬の膵炎・腫瘍への有害性を注視せざるをえない 米FDAのデータベースからの報告 研究の背景:魅惑的な薬だが歴史が浅いだけに有害性情報の吟味が必要 世界的に爆発的に売れ行きを伸ばしつつある糖尿病治療薬がインクレチン関連薬である。 DPP-4阻害薬にせよ,GLP-1受容体作動薬にせよ, (1)低血糖を来しにくく, (2)効果的に高血糖を軽減し, (3)体重増加を来さず, (4)ことによると2型糖尿病における膵β細胞の減少という自然史を変更できるかもしれない ―というその特徴は,多くの臨床家にとって本当に魅惑的なものである。 これまでの論文の内容からは,上気道感染症の増加はあるかもしれないが,重篤な有害作用はなさそうに感じられていたのだが,このたびGastroenterology2月17日オンライン版にインクレチン関連薬によって急性膵炎のみならず,膵がんや甲状腺がんも増加する可能性があるとの報告がなされた。 研究のポイント1:インクレチン関連薬と対照薬,着目・対照イベントの2×2で解析 これまでのインクレチン関連薬の安全性についての論文は,医療費管理会社のデータベースや世界保健機関(WHO)の薬剤安全性情報のデータベースに由来するデータの解析をしていた。 今回の論文は,米食品医薬品局(FDA)のデータベースの情報を利用したものであり,ラストオーサーであるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のPeter C. Butler氏は米国糖尿病学会(ADA)の機関誌Diabetesの編集長(Editor in Chief)でもある重鎮である。 より客観性を持ってインクレチン関連薬(中でも米国での上市が早かったエキセナチドとシタグリプチン)と有害作用(特に,膵炎,膵がん,甲状腺がん,その他のすべてのがんを着目イベントとして設定した)との関連を検討すべく本研究は行われた。 FDAの有害作用情報も他のデータベースと同様に自発的な有害作用報告によって成り立っており,報告バイアスの存在が考えられた。 このため,本研究の著者らは,ロシグリタゾン,ナテグリニド,レパグリニド,glipizideを対照薬とし,また,背部痛,尿路感染症,胸痛,咳,失神といった報告を対照イベントとした。 2004年第一四半期から2009年第二四半期のFDAの有害作用データベースから情報を引き出し,インクレチン関連薬と対照薬,着目イベントと対照イベントの2×2表を作成して,インクレチン関連薬による着目イベントの増加を検証した。 研究のポイント2:インクレチン関連薬で膵炎,膵がん,甲状腺がんの報告頻度が増加 まず,対照イベントについては,インクレチン関連薬と4つの対照薬との間でイベント発症率に差異は認められなかった。 一方,膵炎については,エキセナチドでオッズ比11.76(95%CI 8.52~16.6,P=2×10-16),シタグリプチンで同6.86(4.68~10.2,P=2×10-16)で,対照薬より報告頻度が有意に高くなっていた。 FDAによるエキセナチドに関する膵炎の注意喚起(2007年)の影響を除外すべく,2006年以前に限定して検討してみても,インクレチン関連薬全体で同4.36(2.57~7.81,P=10-10)で,対照薬に比べて報告頻度が有意に高かった。 さらに,膵炎は膵がんのリスク因子であるため,膵がんについても検討したところ,エキセナチドでオッズ比2.9(P=2×10-4),シタグリプチンで同2.4(P=0.033)と報告頻度が高くなっていた。 一方,リラグルチドにおいてげっ歯類での甲状腺C細胞腫瘍の増加が報告されていることから,甲状腺がんについても検討したところ,エキセナチドにおいてのみ有意な報告頻度の増加(オッズ比7.56,P=5×10-4)が認められた(シタグリプチンはオッズ比3.38であったが,統計学的に有意ではなかった)。 それ以外のがんについては,シタグリプチンだけは報告頻度の増加(オッズ比1.59,95%CI 1.24〜2.03,P=9×10-4)を示していた(図)。 山田先生の考察:本研究にはいくつかの限界,しかし膵炎や悪性腫瘍への監視が必要 医療費管理会社Medco社の2007年1月~09年6月の解析データ(Diabetes Care2010; 33: 2349-54)では,シタグリプチン開始患者(n=15,826),エキセナチド開始患者(n=6,545),他の糖尿病薬の開始患者(n=16,244)のいずれにおいても10万人・年当たり500~600例の急性膵炎の発症が認められ,インクレチン関連薬で特に急性膵炎が増えているわけではなかった。 ところが,本研究では,急性膵炎で6倍以上,膵がんで2倍以上のオッズ比の上昇があるという。 この2つの論文のあまりに大きなデータの差に衝撃を受けざるをえない。 また,薬理的なGLP-1作用を生じるエキセナチドにおいてのみ甲状腺がんが有意に増えていたことも衝撃的であるし,DPP-4の阻害によって免疫系への影響が懸念されるシタグリプチンにおいてのみその他のがんが増加していたことも,腫瘍免疫への影響という観点から注視せざるをえない。 もちろん,本研究には限界がある。 本研究は,報告者からの報告によってデータが成立しているので,報告バイアスから逃れることはできない。 また,本研究では,急性膵炎の成因の二大要素であるアルコール摂取量や胆石の存在についての情報はなく,調整をすることがない(アルコール多飲者や胆石保有者にインクレチン関連薬が選択されていた可能性が否定できない)。 特に,過体重・肥満は胆石の危険因子となるわけであるが,過体重・肥満の糖尿病患者にこそインクレチン関連薬が使用されていた可能性は十分考えられることである。 こうして考えると,本研究の結果だけでインクレチン関連薬と膵炎や膵がん,甲状腺がん,あるいはその他のがんとの因果関係が証明されたわけではない。 しかし,インクレチン関連薬を使用する際には,これまで以上に膵炎や悪性腫瘍への監視が必要であるものと,われわれは認識すべきなのであろう。 出典 MT Pro 2011.3.3 版権 メディカルトリビューン社 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
by wellfrog4
| 2011-03-10 00:30
| 糖尿病
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