カテゴリ
全体 その他 感染症 骨粗鬆症 呼吸器科 神経内科 リハビリテーション科 脳外科 糖尿病 腎臓病 産婦人科 消化器 COVID-19 循環器 認知症 アレルギー科 精神科 血液内科 皮膚科 泌尿器科 内分泌 乳腺外科 がん 小児科 耳鼻咽喉科 生活習慣病 耳鼻咽喉科 一般外科 老年病科 再生医療 ゲノム医療 未分類 以前の記事
2023年 04月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 06月 2020年 01月 2019年 11月 2019年 06月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 03月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 05月 2017年 04月 2016年 12月 2016年 10月 2016年 08月 2016年 05月 2016年 01月 2015年 11月 2015年 08月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 02月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2012年 12月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 お気に入りブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
インフルエンザ脳症の発症に患者側要因 解き明かされる重症化メカニズム インフルエンザ脳症患者の解析から、ある遺伝子多型を持つ患者が重症化しやすいことが明らかになってきた。 日本人の2〜3%がこの多型を有しているという。 また、ウイルスは体内でヒトの酵素を利用して感染型に変化するが、炎症に伴う同酵素の活性化が重症化に関与している可能性も示唆されている。 インフルエンザに伴い発症する急性脳症(インフルエンザ脳症)は致死率8〜9%の重篤な疾患であり、毎シーズン、特に小児で問題となる。 このインフルエンザ脳症は、人種により発症頻度が異なり、遺伝的背景が発症に関与していると推測されている。 この宿主側の要因が、徳島大疾患酵素学研究センター長の木戸博氏らによる約10年の地道な研究で解明されつつある。 木戸氏らは、インフルエンザ脳症の重症患者を解析。 重症患者では40℃の高熱時に、長鎖脂肪酸の中間代謝産物(アシルカルニチン)が先天性酵素欠損症と同レベルまで上昇することを見いだした(図3)。 図3 インフルエンザ脳症患者における血清アシルカルニチン比(木戸氏による) 死亡や重度後遺症を生じた患者(○)では、平熱時の脂質代謝は正常だが、高熱時に長鎖脂肪酸が蓄積し、アシルカルニチン比が上昇する。 この理由として、長鎖脂肪酸代謝酵素のcarnitine palmitoyltransferase2(CPT-2)に熱不安定性を生じる遺伝子多型が確認されている。 このような患者は共通して、長鎖脂肪酸代謝酵素(CPT-2)の遺伝子が、熱不安定性を生じる多型となっていた。 CPT-2は、脂質代謝系で長鎖脂肪酸の代謝に関与する。 熱不安定性CPT-2を持つ患者が高熱を出すと、長鎖脂肪酸の代謝が滞り、エネルギー(アデノシン3リン酸:ATP)の産生が極度に減少する。 血管内皮細胞はエネルギーの約70%を脂質の代謝から得ているため、「脳や心臓、肺などの全身の血管内皮細胞の“エネルギー危機”が生じる」と木戸氏。 血管内皮細胞はこのエネルギー危機により膜透過性を亢進させ、その結果、全身に浮腫が生じる。 特に、頭蓋骨で囲まれている脳は、1%の膨張でも脳圧が亢進し致死的なダメージとなる。 また、小児がインフルエンザ脳症を発症しやすい理由として、「小児は成人に比べて、エネルギー源として脂質代謝への依存度が高いため」と木戸氏は解説する。 「成人でも飲食ができない場合にはインフルエンザ脳症が発症することがある」という。 この遺伝子多型は、重度のインフルエンザ脳症患者に共通するが、加えて、乳児の突発性発疹の原因となるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)やアデノウイルス感染で脳症を生じた患者にも、同じ多型が確認されている。 「脳症はインフルエンザ感染によるというよりも、高熱により誘導される血管内皮細胞の膜透過性の亢進が原因と考えられる。ほかの感染症で生じる脳症も同じ機序で発症するのでは」と木戸氏は分析する。 日本人では2〜3%にこの遺伝子多型が存在する一方、コーカサス人種(白人)などでは、この遺伝子多型は発見されていない。 すなわち、日本人は高熱に弱い遺伝的背景を有しているといえそうだ。 脳症の重症化を防ぐために、物理的な手法なども駆使して熱を下げることが重要だ。 木戸氏は、「インフルエンザが重症化した患者に対しては、輸液を介して、CPT-2が代謝に関与しない中鎖脂肪酸やグルコースなどを投与する治療も考えられる」と語る。 宿主がウイルスを感染型に 木戸氏らは、感染に反応して体内で誘導される酵素がインフルエンザ感染を悪化させる可能性も見いだしている。 インフルエンザウイルスは、ヒトの体内で増殖するために、主にヒト由来の蛋白分解酵素(トリプシン)を利用して、感染型に変化する(図4)。 通常、この酵素は気道と腸管に多く存在している。 図4 インフルエンザウイルスが感染力を得る仕組み ウイルスは、宿主内に存在する蛋白分解酵素を利用して、非感染型から感染型に変化する。 ウイルス表面に存在するヘマグルチニン(HA)が蛋白分解酵素で切断されると、膜融合ドメインが露出し、宿主の細胞に融合し、感染できるようになる。 生体はインフルエンザウイルスに感染すると、防御のため、まずサイトカインを分泌する。 このサイトカインは、抗体産生などの生体防御系を発動させ、ウイルスを体外に排除する。 一方、ウイルスを感染型に変えるトリプシンも、サイトカインによって肺や脳、心臓など全身の臓器で誘導されることが分かった。このトリプシンは、さらに、血管内皮細胞同士を強固につないでいる構造を壊し、膜透過性を亢進させるという(図5)。 その結果、血液中のウイルスが臓器に侵入できるようになる。 図5 インフルエンザ感染と生体応答のモデル(木戸氏による) ウイルス感染により、サイトカインが誘導されるが、このサイトカインは、ウイルス排除に働く免疫系と同時に、ウイルスを感染型に変える蛋白分解酵素(トリプシンなど)を誘導する。 トリプシンは、血管内皮の機能を破壊する作用も有するため、多臓器不全という負の影響も生じうる。 インフルエンザの重症化の原因として、サイトカインが過剰産生される「サイトカイン・ストーム」の関与が指摘されているが、「サイトカインにより、ウイルスを感染型に変える酵素が全身で誘導され、かつ、その酵素が血管内皮の機能を破壊することで全身の臓器不全が生じやすくなる。 そして、熱不安定性の遺伝子多型を持つ場合には、さらに重症化リスクが高まる」というのが木戸氏の仮説だ。 実際、高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1は、全身の臓器に通常時から発現している酵素を利用して感染型に変化するという。 感染と同時に全身で増殖できるため、重症化しやすくなる。 さらに、パンデミック2009H1N1によりインフルエンザ肺炎が多く報告された理由として、木戸氏は、「このウイルスは、肺に存在する酵素を利用して感染型に変化する能力を獲得した可能性がある」と推測する。 ウイルスの感染・増殖には宿主が不可欠だが、その宿主側の研究から、インフルエンザによる重症化のメカニズムが明らかになりつつある。 (小板橋律子=日経メディカル) 出典 NM online 2010.11.24 版権 日経BP社 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 「葦の髄」メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ 「井蛙」内科メモ帖 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
by wellfrog4
| 2010-12-03 00:59
| 感染症
|
ファン申請 |
||