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2型糖尿病の発症,進展ならびに動脈硬化における食後高血糖の役割 インスリン初期分泌低下による食後高血糖のインパクトとその治療 食後高血糖は2型糖尿病発症以前の耐糖能異常(IGT)段階からすでにみられ,糖尿病の発症と進展に強く関与することが知られている。 2007年9月にアムステルダムにて開催された欧州糖尿病学会(EASD)において発表された国際糖尿病連合(IDF)による食後血糖管理のためのガイドラインでは食後高血糖が糖尿病とそれによる血管障害の発症リスクとして明確に位置づけられ,その速やかな是正に向けた治療が強く推奨された。 出席者(発言順) 河盛 隆造 氏(司会) 順天堂大学内科学・代謝内分泌学講座教授 Erik Renström 氏 ルンド大学教授 柴 輝男 氏 三井記念病院糖尿病代謝内科部長 Markolf Hanefeld 氏 ドレスデン技術大学臨床研究センター教授 インスリン分泌の二相性パターンには,β細胞表面の2 つの異なるCaチャネルの役割が関与 河盛 IDFが新たに食後血糖コントロールをめざすガイドラインを明確にうちだしたように,糖尿病のコントロールならびに血管障害発症のリスク軽減のためには,「食後高血糖」を可能な限り速やかに是正することがきわめて重要であることが広く認識されるようになりました。 食後高血糖では,食後のインスリン分泌低下が関与しています。 Renström (インスリンの分泌メカニズムの最新情報について) グルコース刺激に対してインスリンは二相性の分泌を示します。 第一相は瞬時で,5 〜10分で終息します。 その後の第二相は,緩徐に分泌が亢進し持続します。 この二相性の分泌パターンがどうして生じるかについては諸説があるのですが,私たちは膵β細胞表面のCaチャネルの役割に着目しました。 グルコースはグルコース輸送担体(GLUT2)を通ってβ細胞内に入った後,ミトコンドリア内でATPを産生し,細胞内ATP濃度を高めます。 すると,ATP感受性Kチャネルが閉じて脱分極が起こり,その結果,電位依存性Caチャネルが開いてCa2+が細胞内に流入し,これをきっかけにインスリン分泌顆粒の開口放出が起こります。 以上がインスリン分泌メカニズムの概略ですが,β細胞のCaチャネルにはL型とR型の 2 タイプがあることが知られています。 そこで,私たちはL型とR型それぞれのCaチャネルのノックアウト(KO)マウスを作製し,Ca2+の細胞内流入がどう変化するか検討しました。 そうすると,L型のKOマウスではCa2+流入が50%低下し,それはインスリン分泌パターンでは第一相の消失として現れることがわかりました(図1)。 一方,R型のKOマウスではCa2+流入が25%低下し,それはインスリン分泌パターンでは第二相の消失として現れることがわかりました。 すなわち,インスリン分泌の第一相はL型,第二相はR型という,異なるタイプのCaチャネルの役割で起こることが判明したわけです。 L型Caチャネルは構造内にインスリン分泌顆粒と結合しやすい部位を持っており,開口放出に大きく関与しています。 したがって,L型チャネルが開くと直ちに分泌顆粒の開口放出が起こり,これがインスリン分泌の第一相を担うことになります。 一方,R型Caチャネルの近傍にはインスリン分泌顆粒は少ない。 したがって,R型チャネルが開いても一定の時間を経てから分泌顆粒の開口放出が起こるので,こちらはインスリン分泌の第二相を担うことになると考えられます。 河盛 2 型糖尿病の親を持つ方々では食後高血糖が起こる前から,OGTT(糖負荷試験)正常型の時から30分インスリン分泌が低いことが認められています。 膵β細胞のL型Caチャネルの機能異常があるのかもしれません。 Renström ヒトでの異常はもちろん未解決です。 インスリン初期分泌低下の影響は末梢組織よりも肝臓ではるかに強く現れます。 インスリン初期分泌が低下するとインスリンによる肝臓での糖新生の抑制が利かなくなり,これが食後高血糖をもたらします。 一方,慢性的な食後高血糖はβ細胞のCaチャネルの感受性を低下させますので,ますますインスリン初期分泌が低下して,さらに食後高血糖が亢進すると考えられます。 インスリン初期分泌の低下が持続するとインスリン分泌が全体的に低下し,糖尿病発症に至る 柴 (糖尿病患者のインスリン初期分泌について) Renström先生からインスリンの二相性分泌についてお話がありましたが,ブドウ糖刺激によるインスリンの初期分泌は糖尿病の早期段階から低下していることが知られています(図2)。 私たちは当院で健康診断を受診した1,000例ほどを対象に,耐糖能とインスリン抵抗性およびインスリン分泌能との関係を検討しました。 その結果,正常からIGT,糖尿病へと耐糖能が低下するにつれて,HOMA-Rを指標としたインスリン抵抗性は亢進していました。 一方,耐糖能が正常からIGTへと低下しても,HOMA-βを指標としたインスリン分泌能は低下しておらず,耐糖能が糖尿病に至るまで低下して,はじめてインスリン分泌能の低下が認められました。同じ対象で,耐糖能とインスリン初期分泌能との関係を検討してみますと,耐糖能が低下して空腹時血糖値が上昇するにつれて,インスリン初期分泌能も低下していることが認められました。 以上の成績から,糖尿病前のIGT段階ではインスリン抵抗性が亢進し,インスリン初期分泌能が低下していても,全体的なインスリン分泌能は正常を保っているが,そうした状態が持続しているうちに全体的なインスリン分泌能が低下し,糖尿病へと進行していくことが読み取れます。 また,インスリン分泌能には人種差があることが指摘されています。 このことは,日本と米国ではBMI≧30kg/m2の肥満者の割合がそれぞれ3,30%と10倍も異なるのに,糖尿病の有病率は同じ8%であることからも容易に推測されます。 つまり,日本は米国に比べて,肥満によりインスリン抵抗性を来すケースよりも,インスリン分泌能が低いために糖尿病を来しているといったケースのほうが多いと考えられます。 事実,日本人と欧米人でOGTTによるインスリン分泌能を比較した成績では,どの空腹時血糖値のレベルにおいても,日本人は欧米人に比べてインスリン分泌能が低いことが示されています(図3)。 Renström 日本人と欧米人のインスリン分泌能の違いについて,遺伝的背景は検討されていますか。 河盛 インスリン分泌動態,インスリン分泌量の人種的差異,遺伝的特質を膵β細胞の遺伝子群の面から追求することが精力的に行われていますが,未だに結果は出ていないようですね。 Hanefeld 米国とは肥満者の割合や糖尿病の有病率がかなり異なる国もたくさん存在します。 ですから,私は糖尿病の発症には生活習慣の影響が大きいと考えています。 同じ生活習慣をしても,そのインスリン分泌能やインスリン抵抗性に及ぼす影響が強く出るか弱く出るかといった遺伝的背景の違いはもちろんあるでしょう。 しかし,いずれにしろ糖尿病はインスリン抵抗性とインスリン分泌能という2つの要因におけるウイークポイントないしダメージが,生活習慣により増幅されることによって発症するというストーリーは,人種により変わることはないと思います。 食後高血糖では炎症,凝固,線溶,脂質代謝などの面でも動脈硬化惹起性の変化が出現 Hanefeld (食後高血糖は糖尿病およびそれによる血管障害を促進する) 糖尿病患者の 1 日の血糖値の推移をCGMS(持続的血糖モニタリングシステム)により記録してみると,食後高血糖があるために最高値と最低値の幅が大きくなっていることがわかります。 空腹時高血糖のみならず食後高血糖が動脈硬化性疾患の発症リスクとなることについては多くのデータが存在しますが,最近では,この血糖変動もリスクであることが明らかになってきました。 心エコーの最新のテクニックを用いて,2 型糖尿病患者の心筋血液量と血流量を測定しますと,食前では健常者と変わりありませんが,食後は血液量と血流量のどちらも著明に低下しています(図4)。 これは,糖尿病患者では食後は糖毒性のために血管内皮機能が低下していて,血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)の産生が低下しているためと考えられます。 糖尿病患者では食後高血糖により,血管内皮を含む血管壁における炎症が亢進していることがわかっています。 また,凝固系が亢進する一方で,線溶系が低下していることも知られています。 さらに,HDL-コレステロールの異化が亢進し,トリグリセライドやsmall dense LDLが高値になるなど,脂質代謝にも異常が現れていることが認められています。 食後高血糖によりもたらされるこれらの変化は,1つ1つはsubclinicalな変化ですが,いずれも動脈硬化惹起性の変化であり,こうした変化が積み重なることで,糖尿病では動脈硬化性疾患が発症しやすいと考えられます。 Hanefeld (ドイツにおける2型糖尿病患者の管理状態) The Diabetes in Germany(DIG)研究という,約4,000例の患者を対象とした調査を実施しました。 その成績では,HbA1cが7%以下にコントロールされている患者は60%近くに達していますが,国のガイドラインが目標と掲げている6.5%以下にコントロールされている患者は36.5%にとどまっています。 この状況は国が作成した管理プログラムを導入した2年後でも大きく変化していません。 インスリンによる積極的治療を推奨したことによって,病態の慢性的な進行は食い止めてはいるものの,心血管イベントのリスクを低下させるところまでは至っていないのが現状です。 食後高血糖の是正には,インスリン初期分泌を特異的に促進するグリニド薬が有用 柴 (食後高血糖の是正に向けた日本における治療の試み) 食後高血糖の是正作用を有する薬剤としてはαグルコシダーゼ阻害薬と速効型インスリン分泌促進薬であるグリニド薬があります。 私たちはグリニド薬の 1 つであるナテグリニドが食後のインスリン初期分泌を促進し,食後高血糖を抑制するとともに,インスリン抵抗性の改善も好ましいことを見出しています(図5)。 ナテグリニドの影響はインスリン抵抗性の程度がHOMA-IR 3〜5の層で最も顕著で, HbA1cはほぼ1%の低下がみられました。 さらに,ナテグリニドはNASH(非アルコール性脂肪肝炎)を合併した糖尿病患者の内臓脂肪を減少させることも認められています。 これは欧米での成績ですが,ナテグリニドとメトホルミンとの併用は,スルフォニルウレア(SU)薬グリベンクラミドとメトホルミンの併用と同等のHbA1c低下効果が報告されています。 Renström ナテグリニドとメトホルミンの併用については,Hortonらもその有用性を報告しています。 彼らは,両薬の併用には,それぞれを単独使用した際の効果を加算した効果があるとしています(図6)。 速効型インスリン分泌促進薬のナテグリニドは服用後短時間で作用しインスリン初期分泌を特異的に促進するため,食後高血糖を速やかに是正します。 一方,メトホルミンには速効性はありませんが,肝臓における糖新生の抑制などにより持続的に作用し,空腹時血糖値を低下させます。 つまり,この両薬は作用がバッティングしないので,お互い併用薬として相性が良いのだと思います。 ナテグリニドは動脈硬化の代理マーカーである頸動脈IMTの進展を抑制 河盛 私たちもナテグリニドの動脈硬化進展抑制に対する影響について検討する無作為化比較試験,NITED(Nateglinide Intervention Trial for Early type 2 Diabetes)を実施しましたが,その結果,同薬は頸動脈IMT(エコーによる内―中膜肥厚度)の進展抑制について有意に好影響を及ぼすことが明らかになりました。 罹病期間が 1 年以上10年未満で,薬物療法歴がない,HbA1cが6.5%未満の 2 型糖尿病患者を対象に,ナテグリニドによる治療を行う群と,食事運動療法のみを行う群に無作為に割付け,1 年間追跡してIMTの変動を検討しました(ナテグリニド群38例,非薬物療法群40例)。 両群の年齢,性別,罹病期間,BMI,HbA1c,各種脂質代謝の指標,血圧,空腹時血糖値,HOMA-β,HOMA-R,各種炎症の指標,IMT,糖尿病以外の動脈硬化リスク因子の治療内容などの背景因子に有意な差はありませんでした。 1 年後,ナテグリニド群ではトリグリセライド,HbA1c,hs-CRP(高感度C反応性蛋白),E-セレクチンの有意な低下が認められました。 一方,非薬物療法群ではHbA1c,VCAM-1,IMTの有意な上昇が認められました。両群における追跡期間中のHbA1cおよび空腹時血糖値の変動を比較すると,6 か月以降において,ナテグリニド群のHbA1cは,非薬物療法群と比較して有意に低値を示しました。 しかし,空腹時血糖値に関しては非薬物療法群との間で有意差は認められませんでした(図7)。 両群における追跡期間中のIMTの変動の比較では,両群間で有意差が認められました(図8)。 2 型糖尿病患者のIMT進展に関連する因子の多変量解析の結果では,唯一HbA1cが有意で独立した因子と認められました(R=0.347)。 以上の結果は,ナテグリニドが 1 年以上有効で,動脈硬化の抑制に好影響を及ぼすことを明確に示しました。 Hanefeld ナテグリニド群におけるHbA1cの低下は0.2p程度ですし,IMT進展の関連因子としての相関係数も0.347と強くありません。 それでも,HbA1cの低下がIMTの抑制に寄与していると考えてよいのでしょうか。 河盛 確かにHbA1cの低下は,臨床的に大きな意義があるとは思えないかもしれません。 しかし,空腹時血糖値が不変にもかかわらずHbA1cが低下したことに注目しています。 つまり,確かに毎食後の血糖応答が是正されたことを示しており,この食後高血糖の低下が動脈硬化の進展抑制にインパクトがあった,と捉えています。 現在,Hanefeld先生などがナテグリニドを用いて心血管イベントの抑制への影響について検討するNAVIGATOR(Nateglinide And Valsartan in IGT Outcome Research)を進行しておられ,近くその結果が明らかにされる予定です。 この結果などを併せて考えれば,ナテグリニドの動脈硬化抑制への影響は,さらに明確になってくるものと期待しています。 出典 Medical Tribune 2007.12.20 版権 メディカルトリビューン社
by wellfrog4
| 2010-09-25 00:38
| 糖尿病
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