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重篤低血糖はなぜ発生したのか:併用によりβ細胞で予期しないことが起こった インクレチン関連薬がわが国の臨床の場にも続々と導入されつつある。 同関連薬は糖尿病の治療に携わる医師にとっては待望の薬剤。 その最大の理由は,“低血糖を来さずにインスリン分泌を促進できる”ことだった。ところが,昨年(2009年)12月にわが国初のインクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬シタグリプチン(商品名ジャヌビア,グラクティブ)が登場して半年も経過しないうちに,同薬投与例において,重篤低血糖が続発した。 4月19日までに報告された症例は32例にのぼる。 注目すべきはその大部分がスルホニル尿素(SU)薬との併用例であることだ。 重篤低血糖はなぜ起こったのか―。 「インクレチンとSU薬の適正使用に関する委員会」のメンバーで京都大学大学院(糖尿病・栄養内科学)の稲垣暢也教授にによる、作用機序の考察の記事で勉強しました。 併用により膵β細胞では予期しないことが起こっていたようだというのが主旨です。 SU薬はβ細胞を疲弊させていなかった! “低血糖を起こしにくい”と考えられていたDPP-4阻害薬で,これほど多くの重篤低血糖例が発生したことを専門家はどのように受け止めているのだろうか。 稲垣氏は「今回の事態は,われわれ専門家にとっても予期しない出来事だった」と打ち明けるが,「インクレチン関連薬のインスリン分泌促進作用は血糖値に応じて発揮され,単独では低血糖を起こしにくい薬剤。その認識は今も変わっていない」とも指摘する。 一方,SU薬は血糖値に関係なくβ細胞を刺激してインスリンを分泌させる薬剤で,投与方法を誤ると低血糖を起こしやすいことは実地臨床で経験されてきた。 DPP-4阻害薬においてもSU薬との併用で低血糖を起こしやすいことは十分考えられることで,同氏もさまざまな場で注意を喚起してきたという。 ただ,治験では重篤な低血糖は確認されておらず,現実に大きな問題になるとは考えにくかったというのが大方の見方のようだ。 ではなぜ,両薬剤の併用で重篤な低血糖が続発したのか。 SU薬には古くから二次無効という現象が知られている。 同薬を使い続けることにより,その効果が十分に発揮されなくなることをいう。 その背景にはSU薬がβ細胞を疲弊させ,β細胞量の減少をもたらす機序が想定されていた。 米テキサス大学のRalph A. DeFronzo氏は「SU薬はβ細胞を殺す」と表現しているほどだ。 今回の重篤低血糖例の多くが,SU薬二次無効例にDPP-4阻害薬が上乗せされた可能性が高いと判断されるが,そのことは図らずもDeFronzo氏の弁に代表されるようなSU薬の認識に修正を迫ることになりそうだと稲垣氏は述べる。 二次無効の状態にあるSU薬にDPP-4阻害薬を併用すると,DPP-4阻害薬の上乗せ効果でインスリン分泌が増強される。 しかし,この上乗せ分は血糖依存性の作用なので,それが低血糖の原因になるとは考えられない。「SU薬が二次無効のままで,DPP-4阻害薬の上乗せ効果だけが表面に出ていたときは問題がなかったが, DPP-4阻害薬を併用したことによって,β細胞の機能や全身の代謝状態が改善され,ある時からSU薬の効果が発揮されやすい状態になったのではないか。そのためインスリン分泌が急に増強され,低血糖に陥った可能性がある」というのが同氏の推測だ。 この推測に基づくと,SU薬はβ細胞をとことん疲弊させていなかったことになる。 「β細胞は保たれていたが,SU薬が十分に効かない状態にあった」と理解すべきだろうと同氏は考えている。SU薬が二次無効と判断される患者でも,SU薬の投与を中止すると血糖コントロールはさらに悪化するという臨床的経験も,このような推測を裏づける材料と言えそうだ。 インクレチン薬による「増幅経路」作動でSU薬による「惹起経路」が急に活発化?まず、生理的なインスリン分泌の機構はどうか。 1.血糖値が上昇すると糖輸送担体(GLUT)を介してグルコースがβ細胞内に取り込まれる。 取り込まれたグルコースは代謝され,細胞内ATP濃度が上昇する。 2.ATPの上昇により,細胞内ATP/ADP比が上昇すると, ATP感受性カリウム(KATP)チャネルが閉鎖され,細胞膜のK+透過性が低下。 膜電位が上昇して細胞膜が脱分極する。 その結果,電位依存性Ca2+チャネル(VDCC)が活性化し,細胞内にCaが流入する。 3.細胞内Ca濃度が上昇すると,インスリン分泌顆粒の開口放出機構が作動し,細胞外へインスリンが分泌される。細胞内Ca濃度を上昇させる経路はインスリン分泌の「惹起経路」と呼ばれている。 SU薬は血糖値や細胞内ATP濃度に関係なく,KATPチャネルを強制的に閉鎖することで,インスリン分泌を促す。 そのため低血糖を起こしやすい。 一方,インクレチン関連薬は細胞内cAMP濃度を上昇させて,「惹起経路」を増幅させることでインスリン分泌を促進する。 この経路は「増幅経路」と呼ばれるが,「増幅経路」は「惹起経路」が働いている場合にのみ作動するのが大きな特徴だ。 言い換えると,血糖値の上昇を受けて細胞内Ca濃度が上昇していない場合には作動しない。 インクレチン関連薬のインスリン分泌促進作用が血糖値依存性と言われるゆえんである。 同氏は「SU薬二次無効と言われる状態にあっても,SU薬はある程度は『惹起経路』を作動させており,そこにDPP-4阻害薬によって『増幅経路』が作動して,『惹起経路』の働きが急に活発になったのではないか」と考察している。 さらに,同氏は「現段階では推測の域を出ない」と断ったうえで,インクレチン関連薬にはβ細胞全体の代謝を改善する作用があり,そのことが低血糖発生に関与した可能性にも言及する。 上記で見たように,β細胞からのインスリン分泌には,グルコースが代謝されてATPが産生されることが重要で,2型糖尿病におけるインスリン分泌不全の大きな要因の1つは,ATP産生の障害である。 ところが,インクレチン関連薬には,β細胞全体の代謝を改善して,ATP産生を改善する可能性があるという。 すなわち,同関連薬は「増幅経路」に作用するだけでなく,「惹起経路」も直接活性化し,インスリン分泌を増強したのかもしれない。 インクレチン薬のグルカゴン抑制作用も影響か一方稲垣氏は,インクレチン関連薬のグルカゴン分泌抑制作用にも目を向ける。 グルカゴンは膵α細胞から分泌される血糖上昇ホルモンで,健康人では血中グルカゴン濃度は空腹時に上昇し食後に低下するが,2型糖尿病患者では食後も高値のままであることが知られている。 したがって,グルカゴン分泌を抑制することは高血糖の是正に有用である。 従来の血糖降下薬のなかにグルカゴンに作用する薬剤はなく,同関連薬の大きな利点だが,低血糖の観点からはあだとなった可能性がある。 たとえβ細胞の疲弊が大きく,インクレチン関連薬の投与によってもインスリン分泌不全の状態が十分改善されない場合でも,グルカゴン抑制作用は十全に発揮される。 生体は夜間に最も血糖値が低下し,その後覚醒に向け明け方にかけて血糖値を上昇させていくが,グルカゴンはその役割を担うホルモンの1つである。 グルカゴン分泌を抑制するとこの時間帯に低血糖を来しやすくなることは,インクレチン関連薬を使用するうえで留意しておきたい点だ。 特に,併用するSU薬の作用がこの時間帯まで遷延している場合は,より注意が必要だと言えるだろう。 出典 Medical Tribune 2010.5.9 版権 メディカルトリビューン社
by wellfrog4
| 2010-05-22 00:49
| 糖尿病
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