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「大血管障害予測能にHbA1Cが空腹時血糖に優る」という論文がN Engl J Med(2010; 362: 800-811)に発表されました。 この論文について北里研究所病院糖尿病センター の山田 悟先生がコメントされている記事で勉強しました。 糖尿病学会の新診断基準案を支持する米コホート研究 大血管障害予測能におけるHbA1Cの空腹時血糖に対する優位性を証明 研究の背景:糖尿病の診断基準はHbA1C単独にすべきか 米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)および国際糖尿病連合(IDF)の合同委員会が「HbA1C 6.5%(日本では6.1%に相当)以上(のみ)を糖尿病の診断基準とすべきである」としたのは,昨年7月号のDiabetes Care(2009; 32: 1327-1334)においてであった。 しかし,今年1月のADAのclinical guidelinesでは,診断基準を以下のように変更しただけであった(Diabetes Care 2010; 32: S62-69,表1)。 International Expert Committee Report on the Role of the A1C Assay in the Diagnosis of Diabetes http://care.diabetesjournals.org/content/32/7/1327.long Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr100304.html この差異が生じた理由は不明であるが,後者は現在までに公表されている日本糖尿病学会の新診断基準案(「糖尿病診断基準改訂の理事会合意案が発表」)の4項目と同様であり,日常臨床に生じる混乱が少なくてすむものと考えられる。 そのようななか,N Engl J Med(2010; 362: 800-811)にHbA1Cの空腹時血糖値に対する優位性を示す論文が発表された。 Glycated hemoglobin, diabetes, and cardiovascular risk in nondiabetic adults. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20200384 研究のポイント1:ARIC試験で将来の血管合併症との関連を検討 ARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)試験は米国において実施されている動脈硬化症に関する前向きコホート試験である。 この試験では1987〜89年に1万5,792例が登録され,これをvisit 1と呼称し,その後1990〜92年にvisit 2,1993〜95年にvisit 3,1996〜98年にvisit 4が行われている。 その後は年に1回電話による健康調査が行われており,最大で15年の経過観察が実施されている。この試験の結果については既に多くの論文が執筆されており,N Engl J Medにも数本以上が掲載されている。 ARIC試験のvisit 2におけるHbA1Cおよび空腹時血糖値が,その後の複数のエンドポイントの発症にいかにかかわっているかを検討したのが本研究である(visit 2の採血検体は保存されていたがvisit 1の採血検体は保存されていなかったため,visit 2がベースラインとされた)。 エンドポイントとしては,糖尿病,冠動脈疾患,脳卒中,全死亡が取り上げられた。 研究のポイント2:1万1,092例の糖尿病発症,血管合併症発症には空腹時血糖よりHbA1Cが強く関与Visit 2には登録者のうち1万4,348例が参加した。 本研究では,この段階で既に糖尿病と判明している者,心血管イベントを発症している者などを除外し,残る1万1,092例(HbA1C 5.5±0.6%, 空腹時血糖値104.7±18.6mg/dL, 年齢56.7±5.7歳, 白人77.6%, 黒人22.4%, BMI 27.7±5.3)を試験コホートとした。 Visit 2におけるHbA1Cで層別化したところ,1群(4.9%以下)949例,2群(5.0〜5.4%)4,950例,3群(5.5〜5.9%)3,683例,4群(6.0〜6.4%)1,031例,5群(6.5%以上)479例であった。 全体では,中央値14年の経過観察期間中に2,251例が糖尿病を発症し,1,198例が冠動脈疾患を,358例が虚血性脳卒中を発症し,1,447例が死亡した。 これを層別化し,2群を対照としてハザード比を検討すると,HbA1Cは将来の糖尿病発症や冠動脈疾患に対しては線形に,全死亡に対してはJカーブに関与することが判明した。 一方,空腹時血糖値でも層別化したが,空腹時血糖値は将来の糖尿病発症には関与しているものの,血管合併症には関与していないことが明らかとなった。 上記の結果は年齢,性,人種,脂質プロファイル,BMI,血圧,糖尿病の家族歴,教育レベル,アルコール摂取,身体活動量,喫煙状況などで補正したものであり,本論文の著者らは「非糖尿病の黒人および白人においては,HbA1Cは空腹時血糖値よりも血管合併症の発症予測に対して有利であり,特にHbA1C 6.0%以上において顕著である。 このことは糖尿病診断におけるHbA1Cの使用を支持するものである」と結論している。 山田 悟先生の考察1:日本糖尿病学会の新診断基準案が支持される 本研究でHbA1Cが大血管障害の予測において空腹時血糖値に勝ることが示された。このことは,糖尿病前段階での大血管障害には空腹時血糖値よりも食後血糖値が関与するという従来の報告(Diabetes Care 1999; 22: 920-924,Diabetologia 2003; 46: M17-21 )と合致するであろうし,「将来的に血管合併症を生じるレベルの血糖値異常」をもって糖尿病と呼称するのであれば,空腹時血糖値よりもHbA1Cで糖尿病を定義すべきということになる。 しかし,本研究は既存の診断基準にある随時(食後)血糖値やOGTT2時間値の糖尿病診断における意義を否定するものではない。 よって,これまで診断基準の補助項目にあてがわれていたHbA1Cを,通常の診断基準に格上げするというわが国の新たな診断基準案は,本研究によっても支持されると言えよう。 山田 悟先生の考察2:Jカーブ現象の理由は「血糖値以外でHbA1Cを下げているものの影響であると信じたい」 さて,問題は全死亡に対するHbA1CのJカーブ現象である。 本研究ではHbA1C 4.9%以下(日本では4.5%以下に相当)において死亡率の有意な上昇が認められた。HbA1C 4.9%以下を目標とした治療介入試験はこれまでに存在しておらず,ACCORD試験(N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559)におけるHbA1C正常化(目標HbA1C 6.0%)群での死亡率の上昇と本研究での死亡率の上昇は背景因子が異なる可能性が高い。 この点につき,本研究の著者らは血糖正常低値が実際に死亡に寄与する可能性のほかに,HbA1Cを規定する血糖値以外の要素が健康障害に関与している可能性について言及している。 私としても後者の影響を想像する。 そもそも,同様に非糖尿病者を対象にした試験でありながら,visit 2におけるHbA1Cの平均値は白人5.4%に対して黒人5.8%で,人種による有意差が存在していた。 当然,1群(HbA1C 4.9%以下)の黒人比率は2群(HbA1C 5.0〜5.4%)よりも低いことが予想されるが,実際の黒人比率は下記のようなものであった(表4)。 こうした黒人比率を見ても,2〜5群の系と1群とがそもそも異なる母集団に属している感がある。人種別で検討してもHbA1Cと心血管疾患や死亡率との関係は保持されていたというが,黒人には鎌状赤血球症が存在し,その生命予後は悪いことが知られている。 同じ黒人であっても,HbA1C 4.9%以下の集団はHbの代謝回転が速くなければならないような特異な集団だったのではなかろうか。 もちろん,こうした私の想像についても本研究の著者らは考察しており,貧血症患者を除外し,平均赤血球容積(MCV)やヘマトクリット値で補正して死亡率を検証してもJカーブは保持されていたと言っている(ただしデータは示されていない)。 しかし,観察研究である以上,なんらかの交絡因子の存在を除外し切ることはできないであろう。 また,「日本のJ-DOIT3試験の重要性を高める英研究」で触れたように,EPIC-Norfolk試験(Ann Intern Med 2004; 141: 413-420)ではHbA1Cと全死亡率の線形の関与が示され,1群(HbA1C最低値群)が最も低い死亡率を示していた。 本研究との比較をする際には,1群の比率が大きく異なっていることに注目したい。 この比率の相違は,ARIC試験の対象集団のなかで特異な存在であったHbA1C 4.9%以下の集団が,EPIC-Norfolk試験では普遍的に存在していたことを示唆するであろう。 この点も両試験を比較するうえでは重要なポイントではなかろうか。 簡単には結論の出せない問題ではあるが,低血糖のない状態で血糖値が正常であることが生命予後を悪くするということは想像できず,健康人でHbA1Cが低いことが死亡率を上げているならば,それは血糖値以外でHbA1Cを下げているものの影響であると信じたい。 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr100304.html 出典 MT pro 2010.3.18 (一部改変) 版権 メディカルトリビューン社 <関連サイト> 糖尿病のADA新診断基準を考える 日本版基準改訂に向けたHbA1Cの課題は? http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090605.html 糖尿病診断基準改訂の理事会合意案が発表 新採用のHbA1Cは2012年4月にNGSP値へ完全移行 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1003/1003027.html Atherosclerosis Risk in Communities Study http://www.cscc.unc.edu/aric/pubuse/ 糖尿病のADA新診断基準を考える 日本版基準改訂に向けたHbA1Cの課題は? http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090605.html ■糖尿病の診断基準とは,「糖尿病とは何か」を示す定義そのものと言える。 もちろん,糖尿病とは「インスリン作用不足による慢性高血糖状態を主徴とする代謝症候群」なのであるが,同じ高血糖状態であっても,「糖尿病特異的合併症を惹起するか否か」により境界型(耐糖能異常;IGT)と区別されている。 ■HbA1Cを用いた糖尿病診断についての勧告(Diabetes Care 2009; 32: 7: 1-8)はADA,欧州糖尿病学会(EASD),国際糖尿病連合(IDF)の3者により作成された「国際専門家委員会」のメンバー21人により委員会報告のなかでなされた(学会の総意とまでは言えない)。 ■この報告では,HbA1Cは血糖値よりも, (1)よく標準化されている, (2)長期血糖曝露との関係が強く合併症との関係も強い, (3)生物学的な変動が小さい, (4)検査前の検体処理までの時間で値が変動しにくい, (5)採血時間による制約がない, (6)一過性のストレスによる影響を受けにくい, (7)治療ガイドで使用されている —といった点で糖尿病の診断に有利であるとされた。 ■中等度の非増殖網膜症はHbA1C 6.5%以上で発症していた。 ■HbA1Cの使用が臨床的に困難な場合があるため,既存の血糖値を用いた診断基準も副次的な診断基準として残すべきであると考えられた。 すなわち, (1)妊娠糖尿病(安全かつ健常な児の分娩のための母体の血糖値であって,糖尿病合併症のための血糖値では診断できない), (2)HbA1C測定のための費用の捻出が困難な場合, (3)Hb異常症の場合(ただし,補正式を用いてHbA1Cを利用できる場合がある), (4)貧血症の場合, (5)劇症1型糖尿病の場合 —である。 ○空腹時血糖値には網膜症発症の閾値がないとする研究結果 Relation between fasting glucose and retinopathy for diagnosis of diabetes: three population-based cross-sectional studies. Lancet. 2008 Mar 1;371(9614):736-43. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18313502 ○2001年にHbA1Cの標準化が成功した。 The national glycohemoglobin standardization program: a five-year progress report. Clin Chem. 2001 Nov;47(11):1985-92. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/11673367 <コメント> 私自身は今や風邪(町)医者ですが、勤務医の際の専門は循環器でした。 糖尿病の学会の動きをチェックするようになったののは実は数年前からです。 いろんな記事を読んでみると、結構、現場の糖尿病専門医が悩んでいるのがわかります。 そういったことはm3.comでのeSDMメーリングリストを読んでも伝わって来ます。
by wellfrog4
| 2010-05-11 00:25
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