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昨日の続きです。 ##どんな患者に厳格血糖管理をすると死亡率が上昇しやすいか ##ACCORD試験のサブグループ解析 #研究の背景:ACCORD試験において何が死亡率を上げたのか 2008年に発表されたACCORD試験(N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559)では,厳格血糖管理による心血管イベント抑制効果を証明することができなかった。 そして,厳格血糖管理群のほうが死亡率が高くなるという思わぬ結果が出ており, (1)真に厳格血糖管理が死亡率を上げる, (2)厳格血糖管理が有意に死亡率を上げたわけではない ―の2通りの解釈がなされ,侃々諤々の議論がなされたのは記憶に新しいところである。 ACCORD試験 Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18539917 ほぼ同時期に報告されたADVANCE試験(N Engl J Med 2008; 358: 2560-2572),VADT 試験(N Engl J Med 2009; 360: 129-139)では,いずれも厳格血糖管理による有意な死亡率の上昇が認められなかったため,その後は,ACCORD試験において何が死亡率を上げたのかに注目が寄せられている。 ADVANCE試験 Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18539916 VADT 試験 Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19092145 この問題は,試験デザイン上,ACCORD試験からは解析できないのだが,「どんな患者背景を持っていると厳格血糖管理によって死亡率が上昇しやすかったのか」を同定することは,新たな仮説「どんな患者に厳格血糖管理をすると死亡率が上昇しやすいか」を見出すのには有用である。 この点について新たな報告がなされた(Diabetes Care 1月26日オンライン版)。 Effect of intensive compared with standard glycemia treatment strategies on mortality by baseline subgroup characteristics: The ACCORD trial. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20103550 #研究のポイント1:40の観点からサブグループ解析を実施 2008年に発表された本試験(N Engl J Med 2008; 358: 545-2559)では,心血管疾患のリスクのある北米の糖尿病患者がHbA1c 6.0%未満を目指す厳格血糖管理群とHbA1c 7.0~7.9%を目指す標準血糖管理群に割り付けられ,平均3.5年の経過観察の結果,厳格血糖管理によって心血管疾患の有意な抑制はもたらされず,死亡率が上昇したことが報告された〔厳格血糖管理群:5,128例,死亡257例(5.01%),標準血糖管理群:5,123例,死亡203例(3.96%),P=0.0368〕。 Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18539917 この報告の際にも, (1)心血管疾患の既往の有無, (2)性別, (3)年齢(65歳未満かどうか), (4)HbA1c(8.0%以下かどうか), (5)人種(白人か否か) ―によりサブグループ解析を行い,65歳未満,HbA1c8.0%超では厳格血糖管理により死亡率が上昇しやすかったことが報告されていた。 今回は,新たに以下の40の観点でサブグループ解析が行われた。 (40の観点については省略) #研究のポイント2:神経障害自覚症状あり,アスピリン服用,HbA1c 8.5%以上*で有意な交互作用あり 上記の40項目の中で,血糖管理群と有意な交互作用を示したのは,神経障害自覚症状(P=0.0008),アスピリン服用(P=0.0309),HbA1c(P=0.0444)の3つであった。 神経障害の自覚症状がある症例では,厳格血糖管理群1,327人中104人(7.84%),標準血糖管理群1,410人中58人(4.11%)(ハザード比1.95,P<0.0001)が死亡しており,厳格血糖管理群での死亡率が有意に高かった。 しかし,足切断およびミシガン神経障害スクリーニングテストで評価された他覚的神経障害が存在する症例では,厳格血糖管理群2,168人中144人(6.64%),標準血糖管理群2,189人中117人(5.34%)(ハザード比1.20,P=0.1524)が死亡していて,血糖管理との有意な交互作用は認められなかった。 アスピリン服用者では,厳格血糖管理群2,808人中161人(5.73%),標準血糖管理群2,771人中106人(3.83%)(ハザード比1.45,P=0.0032)が死亡しており,厳格血糖管理群での死亡率が有意に高かった。しかし,ほぼ同様のことを意味することが期待される心血管疾患の既往者では,厳格血糖管理群1,825例中139人(7.62%),標準管理群1,783例中101人(5.66%)(P=0.054)が死亡していて,血糖管理との交互作用は有意にはならなかった。 HbA1cについては,ベースラインの8.5%以上*の症例において,厳格血糖管理群1,857人中114人(6.14%),標準血糖管理群1,887人中68人(3.60%;ハザード比1.64,P=0.0012)が死亡しており,厳格血糖管理群での死亡率が有意に高かった。 #山田 悟先生の考察:これだけの詳細なサブ解析でも死亡率増加の理由不明―やはり低血糖か ACCORD試験をどのように解釈すべきかについての米国糖尿病学会(ADA)や米国心臓病協会(AHA),米国心臓病病学会(ACC)の声明はDiabetes Care(2009; 32: 187-192)に詳しい。 Intensive glycemic control and the prevention of cardiovascular events: implications of the ACCORD, ADVANCE, and VA diabetes trials: a position statement of the American Diabetes Association and a scientific statement of the American College of Cardiology Foundation and the American Heart Association. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19092168 今回の解析では残念ながらこの声明を超える情報は得られなかった気がする。 すなわち,今回の解析では, (1)神経障害の自覚症状がある, (2)アスピリンを内服している, (3)HbA1c 8.5%以上でエントリーされている ―の3タイプに合致する症例では,厳格血糖管理方針によって死亡率が上昇しやすいことが示された。 しかし,他覚所見で捉えられる神経障害の有無の影響はなく,アスピリン内服と関連しそうな心血管イベントの既往の有無も影響はなく,(1)と(2)では死亡率上昇の真の原因には迫ることができなそうである。 すると,HbA1c 8.5%以上のみが医学的に理解しうる集団となろう。 これだけの情報では,ACCORD試験の厳格血糖管理群における死亡率の増加の理由は不明のままなのである。 しかし,このような詳細なサブ解析でも,きちんとした理由が把握できないことにより,厳格血糖管理により生じた結果の要素が死亡率の上昇に寄与したと考えるのが自然だという気が強くわき起こってくる。 すなわち,今回の解析でも理由が不明であったことが,低血糖の死亡率上昇への関与を示唆すると思えるのである。 ADAなどの声明が述べるように,厳格血糖管理によって生じた低血糖が,別の結果として生じた死亡率上昇に関連しているかを統計学的に確定することはできても,そこに因果関係があるかを統計学的に確定することはできない。 しかし,医療は,科学によって証明されなくても,患者の利益や嗜好に合致するように実施されるべきである。すなわち,われわれがACCORD試験から学ぶべきことは,「患者教育や生活習慣指導を軽んじ,多量の薬剤を使用して,頻回な低血糖と著明な体重増加を来しながら,HbA1cの低下をもってよしとするという医療では,かえって死亡率を上昇させうる」ということであろう。 出典 MT Pro 2010.2.2 版権 メディカル・トリビューン社 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
by wellfrog4
| 2010-02-20 00:59
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